知財管理2020年2月号
知財管理の2020年2月号に、「グローバルなブランド・商標管理における本社、地域統括企業、ローカル企業の役割」という論説がありました。商標委員会の第2小委員会がまとめたものです。
グローバルブランド(コーポレートブランド、プロダクトブランドの双方。複数の国又は地域で展開するブランド)について、知財協会商標委員会加盟61社にアンケートをした調査結果のまとめが掲載されていました。
アンケートは、「ブランド管理」「商標管理」「M&Aしたブランド・商標管理」に分けて質問したようです。
1.「ブランド管理」
・ブランド委員会の有無
・ターゲティングとネーミング
・ブランド規程の有無と管理
2.「商標管理」
・商標権者
・適正使用チェックの有無と手法
3.「M&Aしたブランド・商標管理」
各社において、ブランド・商標管理は、グローバル本社(GHQ)、地域本社(RHQ)、ローカル(Local)が役割分担しているとして、この3部門の内、どこがメインなのかを調べています。結果は、
・コーポレートブランドの商標権者は、94%の企業がGHQ
・プロダクトブランドの商標権者は、RHQが20%、Localが14%、GHQの比率は66%
また、M&Aしたブランドについては特別な質問があり、
・42%の企業がM&Aしたブランドがあるとしていますが、
・ブランドの管理はGHQが51%、RHQが26%、Localが23%となっています。
ブランド管理や商標管理の類型を、
・Type A:GHQ中心
・Type B:GHQとRHQ・Localの協力
・Type C:RHQ・Local中心
に分けて分析しています。
詳細は同紙をご確認ください。
コメント
古典的なブランド管理や商標管理では、グローバルブランドは、できるだけグルーバル統一基準で、GHQが中心となって運用するというのがセオリーです。
しかし、この論考によると、コーポレートブランドは確かにその通りであるが、プロダクトブランドについては、現地化されているものが案外多いとあります。
ブランドコントロールの一番の元は「商標権」ですので、商標権の名義を見れば一番良く分かります。コーポレートブランドでは94%がGHQですが、プロダクトブランドでは66%に留まり、34%はRHQやLocalに任せています。
RHQを本社の一部とする考え方も有力ですし、M&Aしたブランドはその会社に管理を任せておくという方法も良くありますので、グローバルブランドの34%がそのまま現地化が進んでいるという分析はできないように思いますが、プロダクトネームレベルでも、日本の事業部門が中心となったものなら、基本は日本で面倒を見るべきと思いますので、34%は意外な数字です(多いです)。
この点、LVMHをみると、Louis VuittoneやHennessyやBVLGARIの各社に商標権を残しています。
一般的には、商標は実際にそれを使っている会社のものという感覚があるのでしょう。もし、被買収企業に事業を任せておくだけではなく、買収した会社がそのブランドも自らの一つのブランドとして採用するのであるなら、商標権の名義を変更することも自然なのだと思います。
LVMHは持株会社ですので、自分で事業をすることもなく、商標権の名義での形式的なコントロールよりも、人事、経理、経営計画、その他で十分にコントロールできるし、商標権を各社に残しておく方が、機動的に模倣品対策やライセンスなどの商標権の使用収益処分を生かした活用ができます。
A~Fの事例を良く聞いてみたいのですが、この論説だけでは、実際のところが分からないがつらいところです。知財協会の第2小委員会のメンバーが、一番、情報を持っておられるかもしれません。