Nishinyの商標・ブランド日記

商標・ブランドの情報です。弁理士の西野吉徳のブログです。

パテントの商標の特集2

小売等役務制度

昨日に引き続き、パテントの2020年2月号の」「商標」特集を読んでいます。今日は、山田朋彦弁理士の「小売等役務制度に関する事例紹介と今後の課題について(制度導入から十余年を経て)」を読みました。

 

小売・卸売サービスの登録が始まったのは、2007年4月であり、今年の4月で13年になるようです。

2005年から2016年末まで12年間ほどは、知財業界ではなく、ブランドマネジメントジメントの仕事をしいていたので、その間の法改正や動きをフォローできていない部分があり、小売等役務もその一つです。

 

この論考では、制度創設の経緯、制度導入時の争点が詳しく説明されていたので、良い勉強になりました。

 

基本的に、法律上は、昔の小売は商品商標で権利取得するという考え方を残した上で、商品の品揃え、陳列、接客サービス等といったサービス活動が、小売サービスとなるという整理のようです。

商標法2条1項2号のカッコ書き「(全号に掲げるものを除く。)」が根拠のようです。

当時、すでに商品商標で権利を取得している人が多かったので、既存の権利が無駄になることをおそれたためでしょうか。

 

よって、製造小売の事業者は、商品商標と35類の双方の権利をとらないといけないのは納得できるとしても、単なる小売事業者であっても、クロスサーチされてしまうため、販売する商品の権利まで手当しないと、結局35類の権利を取得できません。

 

異議申立を待って審査するとする程度で良いように思います。クロスサーチまで必要だったのかなという気がします。

この関係を切るためには、法改正が必要ということなので、簡単にできそうにありません。

 

最近、どの国でもそうですが、35類の商標出願件数が非常に多くなっています。

特に、クロスサーチをする国では、35類だけで商標権を取得すると広い範囲の商品商標に禁止権を及ぼすことができるので、35類だけ抑えれば良いという人が出て来るのではないでしょうか。

 

このクロスサーチですが、類似商品役務審査基準には、次のようにあります。

本審査基準の運用について

3 商品と役務の類似について
商標法第2条第2項に規定する役務(以下「小売等役務」といいます。)を指定した出願については、類似と推定する商品の範囲もクロス・サーチを行い、商品を指定した出願については、類似と推定する小売等役務の範囲もクロス・サーチを行います。

すなわち、相互にクロスサーチされます。ということは、商品商標を調査するときは、35類の調査が必須となります。

 

この点、商品商標をを先決事項と考えるなら、クロスサーチは片務的に、35類の小売等役務の審査のときだけするという方法もあったように思います。

実務では、商品商標の審査では、自動的に小売等役務をクロスサーチしているようです。

 

そもそも、台湾などは、クロスサーチしないようですので、それも一つの方法だったのではないかとも思います。

また、付与前異議だったら、異議待ち審査にしても良かったようなところです。付与前異議に戻すこととセットで、考えたいテーマです。