2020年3月9日の日経の一面トップに、日通、アクセンチュア、インテル日本法人が組んで、ブロックチェーンを活用した輸送網を整備に1000億円を投入し、偽造医薬品の混入防止を始めるという記事がありました。
偽造品排除へ先端物流、日通などがブロックチェーン 最大1000億円投資 まず医薬品で :日本経済新聞
- 医薬品からスタート。将来は消費財全般に
- ブロックチェーンは、暗号資産(仮想通貨)からビジネスの効率化へ
- データが合致しない場合は輸送網から外す
- OECDによると、2016年の」世界の偽造品被害は5090億ドル(約53兆円)
- 日通は倉庫・トラックを、インテルはセンサーを、アクセンチュアがシステムを担当
- 医薬品では、GDP(適正な流通基準)の導入が広がっており、これに対応
- 各段階をリアルタイムに追跡、共同利用できる基盤に
- RFID(無線タグ)を医薬品に貼り、輸送箱にはセンサーを、工場・倉庫等には、情報吸い上げる専用機器を設置
- クラウド上で紐づけ
- 世界の医薬品は、8282億ドルの市場規模。1割が偽造薬
- 将来はブランド品など高額品にも
というような内容です。
コメント
RFIDが騒がれていたのが、20年ほど前だと思います。このとき、模倣品も騒がれていたので、RFIDを使った模倣品排除ができないものかと話になっていました。
しかし、実際に産業界で運用するには、20年かかるんだなというのが、印象です。
ブロックチェーンでなく、他の暗号を活用する方法でも同じことはできそうですが、ブロックチェーンが流行りなのか、何かのメリットがあるのか良く分かりませんが、日通は、ブロックチェーンでやるようです。
出願日から20年で特許の存続期間が終了します。何のために特許を取ったのか、社会の知識や知恵を蓄積するために取ったのか、というような気がします。
さて、この記事では、「偽造品」という言葉を使っています。知財の世界では今でも模倣品対策というように、「模倣品」が一般的です。
「海賊版」は著作権侵害品を指し、「模倣品」は特許権や商標権の侵害をしている商品を指すように思います。
偽物対策など「偽物」という言葉が当初は多かったのですが、これは「本物」に対する反対概念です。
「模倣品」という言葉には、「偽物」とは違った意味が込めらています。
模倣品業者は、自分は自分が作った本物と思っているかもしれませんが、特許や意匠や商標の権利を侵害しているなら、それは製造販売できません。主観的意図は関係ありません。
また、「模倣」自体は悪ではなく、模倣をしながら文化や技術は発展するものであり、問題は、権利侵害をしていることが問題であるという視点もありました。
模倣品対策というと、派手なレイドアクションに目が行きますが、実は権利取得が一番重要ということが、「偽物」という言葉から「模倣品」という言葉にシフトしたときに、込められたように記憶しています。
おそらく、正確なのは「侵害品」です。しかし、これではアイキャッチが無かったのだと思います。そこで、「模倣品」という言葉を皆が使うことで、問題を「見える化」したのだと思います。
ただ、模倣自体は悪ではないという論点からすると、本当は「偽造品」が良いのかもしれません。
もう一つ、模倣品にしろ偽造品にしろ、商品です。サービスではない点が、特徴です。