「総理通訳の外国語勉強法」
中川浩一さんという現役の外交官の方が書かれた、講談社現代新書の「総理通訳の外国語勉強法」という本を読んでみました。
著者は、アラビア語の専門家であり、タイトルにもあるように総理や天皇陛下を通訳したことがあるようです。
海外留学なしで、外交官の試験に合格し、アラビア語という難しい言語に配属され、数年でアラビア語をものにしたとのことです。
その過程で習得した外国語習得の方法論を開陳しています。当然、英語も同じように学ぶことができ、本書の説明は英語の単語や例文で説明してくれています。
本書の特徴は、
- 外国語脳より日本語脳重視
- インプット よりアウトプット重視
- スピーキングファースト
- 自己発信ノート(自分の言いたいことをノートに書いておく)
- オリジナル単語帳を作る
というような勉強法です。聞き流しの英語学習法ではダメということも云っておらえれます。
リスニング、リーディング、スピーキング、ライティングとあると、通常はリスニングやリーディングの勉強が中心になりがちですが、これではインプット過多になり、使える英語になっていないということで、実際に使える英語ということからスピーキングを重視するとあります。
そしてスピーキングができるようになると、リスニングができるようになると言います。(※ライティングで書ける単語は、リーディングで読めるというのと似ている話でのようにも思いますが、スピーキングができない人は、本番でリスニングする機会もない。あるのはテスト程度と云っておられます。そうかもしれません)
自己発信ノートを使った勉強法は、イチロー引退時の記事を例にして説明されているので、詳しくは本書をみていただきたいのですが、
- まず、日本語で言いたい内容を考える(日本語脳)
- それを外国語で記載してみる。例えば、イチロー引退時の記事を少し修正し日⇔英の文章を一対を作る。このとき、英語などであれば、日本語と英語の対訳のものが沢山あるので参考になる(※ この時点で、英文の理解など、ある程度の文法力や語彙力があることが前提になっています。外交官試験に通っている方ですので、元々、レベルは一般に比べると非常に高いのだと思います)
- 日→英のできる単語(使える単語)、英→日はできるが日→英ができない単語(覚えるべき単語)、知らない単語、に分ける。この覚えるべき単語が重要(オリジナル単語帳ですね)
- 覚えるべき単語の同義語を書きだす。この言い換えができないと言語能力のレベルが低いとみなされる(※ 能力レベルが低いとみなされるとそれに見合ったレベルの話しかしてくれなくなり、これはビジネスでも不利)
このような勉強をしていくようです。
そして、同時通訳がするようなパラフレージング、クイックレスポンス、リプロダクション、サマライジング、DSLといった手法について、方法論を紹介しています。
ある程度の基礎が必要ですが、この本に記載されているようなことをしないと、外交官として政府要人の通訳などはできないというのは良く分かります。
自己発信ノートについては、イチロー引退の文章が例文になっていますが、別のところでは、自己紹介、自分の専門分野などで、このような云いたいことを予め作っておくと良いとあります。
コメント
外交官ではないので、通訳することまでは求められませんし、日常の海外の事務所とのやり取りは、emailがメインであり、直接会って話をすることは、現時点はほとんどありません。スピーキングファーストと日常業務とはギャップがあります。
しかし、自分の云いたい話題について、イチロー引退のような文章(自己発信ノート)やオリジナル単語帳を作るのは、大変良い勉強法のような気がしました。
特許事務所の外国商標の仕事に転職してからの3年間、英語学校に通ってTOEICも目標点を突破し、日常の仕事の文章を読むことや書くことにも慣れてはきましたが、スピーキング力という意味ではまだまだですので、この本にあるような方法を少し試してみようかなと思いました。