Nishinyの商標・ブランド日記

商標・ブランドの情報です。弁理士の西野吉徳のブログです。

INTAのBRAND VALUE

EXECTIVE SUMMARYを読んでみました

2020年4月16日にINTAのWebサイトにあったBRAND VALUEについての要約を読んでみました。INTAの会員企業や事務所は見ることができます。

Brand Value Special Task Force Report

 

色々と記載があります。

  • INTAのBrandの定義を変更したい
  • 現在は、"Brand" means the total identity of a product or service, which a current or prospecive consumer relates to and connects with intellectually, psychologically, and/or emotionally. "Brand" is a complex, multi-layered promise of what will be delivered to and experienced by the consumer.となっている
  • これに、brands are intangible assets capable of generating economic benefitを含めるよう提案
  • Brand Valueの定義が、ISO10668とISO20671で違う定義となっている。2つのISOが不整合であるため、今回は、両論併記とする
  • Brand Equityの定義(American Marketing Associationの定義がある)
  • ISO10668 (2010、Brand Valuation)・・・金銭評価(Income Approach, Cost approach, Market Approach)・・・ファイナンス視点で作成
  • ISO20671(2019、Brand Evaluation)・・・評価(Brand Strength, Brand Performance, Finacial Results)・・・マーケティング視点で作成
  • 双方のISOの作成に、法律専門家が入っていない様子
  • タスクフォースメンバーは、侵害訴訟の損害賠償の判例法に関心
  • ファイナンスマーケティング、リーガルの専門家の相互理解の必要性
  • インハウスは、法務・ファイナンスマーケティングでの会議をもち相互理解をし、グループ内のブランド使用料について議論し、資産の棚卸をする。
  • ローファームは、M&Aや移転の関係、コンサル業務を開拓する。PRや税務との関係を築く
  • INTAは次の2022-2025もこの課題に取り組む

などとあります。

 

コメント

INTAでもブランド価値評価の検討をしているようです。やり始めると、さすがに深いところまでやっているようです。タスクフォースのメンバーには、実務家、大学教授の他、保険会社やインターブランド人もいるようです。

 

しかし、デービッド・アーカーのブランド・エクイティは、1991年の本のようですので、そこから30年ほどになります。やっと、商標(法律)の世界でも、本気で議論し始めたのかという感じです。

 

INTAの要約で、一つ理解したのは、Valuation(金銭評価) と Evaluartion(評価)の違いです。Valuationの動詞はValueで、Evaluationの動詞はEvaluateであり、確かに違いがあります。

 

ファイナンス、会計、税務、マーケティングブランディング、商標、法務が、勝手に動きますので、これを統合しようとすると、大変だなと思いますが、やるしかないというところでしょうか。

 

INTAの要約にある表を見ていると、Brand Valuationは「ブランド価値金銭評価」、Brand Ealuationは「ブランド活動評価に基づくブランド価値の構築」に近いかなと思いました。

 

商標専門家がすることは、ブランドポートフォリオ(権利取得や棚卸し)、侵害訴訟での金銭評価というものの他に、模倣品対策や、取引先との契約によるブランド価値の維持向上策があるように思います。

権利は沢山あっも、異議申立もせず相手の権利も近所に乱立していて、ボロボロの権利状態の商標に、高い財産価値があるとは思えません。模倣品対策も同様です。

また、取引先との契約で、適切なブランド使用ルールを決めて、守ってもらうという地道な作業をしていないブランドに価値があるとも思えません。

 

模倣品対策が十分であり、取引先との契約があることは、ブランド価値金銭評価においても、プラスになるはずですし、当然、ブランドが健全であり、強いブランドになっているので、自ずから金銭価値も高いのではないかと推測しています。

マーケティング的な認知や、好意度、購入意向調査などでは算出されないものが、商標面では多くあるように思います。

 

Brand Valuation, Brand Evaluationを検討するなら、このあたりのことも含めて、議論した方が良いように思います。 

そうすると、経営者が、本気で、模倣品対策や異議申立を含めて、商標のことを考え始めるのではないでしょうか。