ブロックチェーンで二次著作、三次著作を把握
2020年4月20日の日経に、ブロックチェーンを使った漫画や動画の紹介がされていました。
- ブロックチェーンで権利やランセンス契約の情報を改変されずに記録。二次創作や中古市場で収益還元
- 中古の電子書籍:TARTの実証実験。電子書籍へのコメントが二次著作。
- 紙の中古本は転売されても、日本では欧州諸国のような追求権はない
- 追求権:絵画などがオークションなどで天拝されるたびに、著作権者に一定の著作権料が還元される権利
- 今回のものは、転売のたびに売上から一定割合で著作者に還
- 他に、二次創作者、三次創作者らに報酬を出す仕組み:電通と角川アスキー総合研究所が漫画で実証実験。コメントや翻訳や番外編を想定。改変行為を見える化して、二次創作者の貢献ととらえる
- なお、改変行為は現在のコミックマーケットでは黙認されているか、実態把握ができていないだけ
- 海賊版対策:博報堂とケンタウロスワークスがサービス開始。出版社や映画会社がデジタルデータを登録すると、ネット上で侵害物を自動検知し、侵害の証拠を保全し、ブロックチェーン上に保存。交渉、提訴、黙認の選択肢
コメント
デジタル著作物の著作権流通と、二次的著作物の把握の話です。
ブロックチェーンの技術が入っている点が新しいのだと思います。
まず、TARTのものですが、電子書籍の中古書籍という発想自体がありませんでした。電子化されると、紙のような劣化がなく(すなわち、中古というものがなく)、同じものの複製が可能で、暗号化などで複製ができないようにコピープロテクションをしないといけないと思っていました。
従来の電子書籍では、ライセンス構成で、電子書籍の転売ということを認めていなったのが、転売ができることは読者からすると大きなメリットかもしれません。
一度読んで理解したら、微々たる金額かもしれませんが紙の本なら転売が可能です。しかし、電子書籍は転売という方法がなかったのが、換金できることはメリットであるように思います。
TARTのものは、コメントを付けることで二次的著作物とすることでき、流通させることができるという発想ではないかと思います。
インフルエンサーのコメントは、中古流通にプラスになりそうですし、反対に意に反するコメントなどは議論になりそうです。
別の人のコメントと分かるなら、(改変の問題ではなく、改変についての)原著作権者の承認も不要かもしれません。原著作権者との契約の問題は色々ありそうですが。
ただし、今回はアプリのようですが、一定のプラットフォーム上でないと閲覧できないようにしてあるように思います。
これが、PDFのように、スマホでもタブレットでもPCでも、各種の機器で同じように見えるなら、ありだなと思いました。
この記事が面白いなと思ったのは、欧州の追求権というものに言及している点です。
追求権というと幸福追求権(憲法13条)ぐらいしか知りませんでした。Wikipediaによると日本とアメリカ、中国では未採用ですが、欧州では制度化されているようです。著作者人格権であり、一身専属とあります。日本で著作者人格権というと、同一性保持権をイメージしますので、金銭対価請求とは整合せず、追求権の検討自体が進んでいないのかなと思いました。
確かに、原著作(権)者に利益が還元されるなら、電子書籍の中古版はOKなように思います。
しかし、権利情報(例えば、ライセンスの情報や、ライセンスの移転情報)が、ブロックチェーンで記録されているなら、何もコメントを付けて二次的著作物にしなくても良いような気もします。そのあたりは、ちょっと良く分かりませんでした。
電通と角川アスキー総研のものは、TARTに近い機能があるのかもしれませんが、二次著作権者の育成に重点を置いているようです。
博報堂とケンタウロスのものは、ブロックチェーンは使っているのかもしれませんが、海賊版対策であり、まったく別もののように思います。