Nishinyの商標・ブランド日記

商標・ブランドの情報です。弁理士の西野吉徳のブログです。

新型コロナ対策の知財無償提供

トヨタキヤノンなど

2020年5月1日の日経の1面に、京大の松田文彦教授の呼びかけに応じ、新型コロナウイルス対策として、トヨタキヤノンなどが特許を無償開放するという話がありました。

コロナ対策の知財、無償で提供 トヨタやキヤノン、世界に :日本経済新聞

京大発スタートアップのジェノコンシェルジュ京都が事務局となっているとあります。

  • 参加企業は、日産、ホンダ、島津製作所、味の素、SRLなど。今後も幅広く参加を呼びかける
  • 特許、実用新案、意匠、著作権新型コロナウイルス感染症対策限定
  • 原則として無償。海外企業も使用可能。期間は、WHOが流行終結を宣言するまで
  • 開放特許は数十万件以上。トヨタの身体に触れずに呼吸データを取る技術、島津製作所の小型のエックス線装置などが目玉
  • 特許の交渉に1~2年かかる。この手間を省きすぐに使える
  • 企業は新型コロナでの業績の落ち込みを最小限にする狙い

とあります。

 

コメント

事務局は京大発スタートアップのジェノコンシェルジュ京都です。

GenoConcierge Kyoto

同社のWebサイトを見てみると、趣旨説明、宣言書(ワードファイル、宣言には限定を付けることが可能)、これまで宣言をした会社のリスト、宣言をした会社が使用できるマークのロゴデータが記載されていました。

 

仕組みとしては、規格特許の宣言などに近いようですが、非常にオープンな感じです。

 

「COVID-19と戦う知財宣言(COVID対策支援宣言者)」という文書が4月3日付で出ており、その後、4月末ぐらいにトヨタキヤノンが宣言をしたようです。

この2社にとっては、新聞でも見出しに出ていますので、広告効果もあります。

 

上記の知財宣言には、「感染症対策を早急に進めていく上で、知的財産権が障害となる事を防ぐ環境を整える」とあります。知財が障害になるのを防ぐというのは、知財関係者にとっては少し耳の痛い話です。

 

宣言期間終了までという条件ですので、その後は通常のライセンスに移る必要がありますが。

緊急事態ということで、面倒なライセンス交渉の手間は不要というのは良く理解できます。

 

無償開放の期間の長さがポイントになりますが、SARSのときは「集団発生は2002年11月16日の中国の症例に始まり、台湾の症例を最後に、2003年7月5日にWHOによって終息宣言が出された」とありますので、1年弱だったようです。

SARS(重症急性呼吸器症候群)とは

今回は地理的に拡大し、南半球での感染者が出ているので、もっと長くなるように思います。

 

どのような企業が参加しているのかや、各社の追加条件は何なのかということは、事務局のWebサイトで分かりますが、どのような特許があるのかについては記載がありません。そこは、各社が自分で調べるということなんだと思います。

 

また、現在、宣言を出している企業ですが、キヤノンNEC子会社は別として自動車関係が多いようです。電子機器などがもっとあっても良いように思います。

医薬品や医療機器の場合は、薬事法などの制限もあり簡単に承認ができるものでもないので、実際上は今回の時間軸では無理があるのかもしれません。

 

もう一つ、折角の取り組みですが、海外の企業の参加がありません。海外にも各国で類似の取り組みがあるのなら、それでバランスされていると思いますが、国内だけの取り組みでは効果が限定的にならざるを得ないように思いました。