Nishinyの商標・ブランド日記

商標・ブランドの情報です。弁理士の西野吉徳のブログです。

新・商標法概説(その1)

商標保護の重要性、標識の機能

新・商標法概説を読んで、面白いと思った内容、気になった内容をメモしておこうと思います。まず、3ページから7ページまでを読みました。

 

実質的な商標法は、商標登録性の有無とは関係ないが、近代商標法は「登録」という法技術を利用して商標を保護している。

商標保護の歴史は、商標を利用した不正競争(詐欺)に対して、刑法上の詐欺だけで対処するのは商標の信用保護に不十分であるので登録制度になり、商標登録制度は、次第に「商標の財産化」を促し、商標は知的財産と重要になった。

とあります。

 

新・商標法概説では、標章の前に、標識があるとしています。

標識>標章>商標です。

 

標識の例としては、国旗、紋章、印章、氏名、名称、雅号、芸名、筆名、商号、営業標、役務票を含むとしています。

そして、標識の本質的機能は、区別機能(識別機能)であるとしています。

 

標識の中に標章があり、標章の定義は「しるしとする徽章または記号」という広辞苑の定義を紹介しています。

 

この標章の基本的機能は「識別機能」であるとし、例えば、クボタやホンダなどの「氏」は、所有標としての標識的機能は果たすが、市場において誰の商品かは分からず(※商標としては機能せずということでしょうか?)、

使用による識別力で、あのクボタ、あのホンダという一定の出所を表示する力があれば、識別力があるとします。

そして、この識別力により、その標章を付した商品に一定の期待を持つ品質保証機能やが生じ、

また、識別機能、品質保証機能から、さらに広告機能が派生するとします。

 

コメント

商標(トレードマーク)の前に、標章(マーク)を認識するのは、商標法の論理構成ですが、小野先生は、その標章の前に、さらに「標識」を置いています。

後々、意味が出てくるのかもしれませんが、とりあえず、標章よりも、もっと広いものを意識せよということぐらいに捉えておこうと思います。

 

先日読んだ、パテントの大塚教授の論文では、識別機能と出所表示機能を分けて説明していましたが、小野先生のこの書き出しは、識別機能(≒出所表示機能)、それから派生した品質保証機能と観念し、更に識別機能と品質保証機能から広告機能が出てくるとあります。

 

少し先の方を見ると、商標の機能は56ページ以降ですが、出所表示機能、品質保証機能、広告機能(並びにその他の機能)としています。

こちらでは、出所表示機能です。

 

小野先生の書きっぷりかはら、本質的機能は識別機能というのは明確ですが、識別機能と出所表示機能は同じと考えていると読むのが素直なようにも思いますが、

大塚教授的に、クボタやホンダは、識別機能はあるが、通常は出所表示機能はなく、使用により識別力を獲得すると、出所表示機能が生じるとも読めます。

 

大塚教授的なことを考えていたけれども、明示的に書くと説明が面倒なので、そう読めるように教科書を記載したのかもしれません。

色々な深読みができます。