商標の種類(分類)
商標の種類は、1構成、2機能、3使用主体、4その他から分類できるとしています。
1 構成上の分類:商標法の商標の定義(構成要素)に沿った分類です。
2 機能上の分類:何を対象物にしているかに沿った分類です。
- 商品商標: 商品標(マーチャダイズ・マーク)だが、営業標(ビジネス・マーク)になるときもある。「ソニー」のように、当初、個別商標だったものが、営業全体を示す、企業商標(ハウス・マーク)になることもある。
- 役務商標(サービス・マーク)
- 営業商標: 社章(ハウス・マーク)のような営業を示す標章が、営業商標の典型。営業商標は、営業を示す企業標でもある。個別商標が企業標に発展した例は、ソニー、シチズン、サントリー、大関
- 団体商標・地域団体商標: 大正10年法では団体標章、昭和34年法で使用許諾制度の導入で廃止。平成8年に国際的調和の観点で、団体商標として再導入。平成17年に地域団体商標制度導入
- 等級商標: 例として、サントリーのトリス、サントリーレッド、サントリーオールド、サントリーリザーブ、サントリーロイヤル、インペリアル。サントリーの付いたものは、サントリーの派生商標でもあるし、ファミリー・マークでもある(※今のサブブランドの用語に通じるものです)
3 使用主体による分類:使用主体に着目した分類です。
- 製造標: 販売標のみのときよりも、製造者に有利。商標採択における製造業者と販売業者の主導権争い
- 販売標: 販売業者による商品の選択を示す。一定の品質保証機能あり。時に、1つの商品に製造標と販売標が併記されることがある(ダブル・チョップ/double chop)
- 役務標
- 証明標: 米国法では証明標(collective mark)は、通常の商標とは別に規定
4 その他の用語
- ファミリー・マーク
- 造語商標:coined markの他に言い方として、arbitorary mark。1986年改正前の英国法では、防護標章は造語に限定されていた
- 貯蔵商標(ストック・マーク): ドイツでは、商標の使用義務違反であるから、不使用猶予期間を超えたストック商標は違法としている。日本では審査が長期なので、商品開発のいざというときのため、ストック商標が極めて多いが違法という認識は薄い。
- 広告商標: キャッチフレーズ、スローガン
- プライベート・ブランド: かつては商品商標は、メーカ・ブランド優位であった。卸売り業者や大型小売業者のような販売業者が力をつけてきた。製造業者の製造標を付さず、販売標だけを付したもの。販売標の一つ
コメント
法的に重要だなと思ったのは、ストック商標はドイツでは違法であるという記述です。小野先生は、ドイツ法に通じている方ですが、違法というのは、どういう意味でしょうか。
ドイツでも不使用取消で取消されるまでは商標登録はあります。ただ、権利行使は不使用ではできないと規定されているので、日本以上に空権です。
それで十分であり、違法とまでする必要があるのか?と思いました。
使用義務を、本当の義務と考えないと、違法にはなりません。
ここは、ちょっと気になります。
一つの商品に、製造標と販売標の2つがつけられる、ダブル・チョップという言葉は、営業の人から良く聞く言葉ですが、商標法の教科書にもあるんですね。
商標部門では、ダブルブランドと言っていました。
チョップという言葉ですが、空手チョップの「チョップ」は、「手刀」を指すようです。そもそも、動詞で「(斧で)たたき切る、ぶった切る」という意味のようです。しかし、それでは商標の上の意味では、意味を成しません。
おそらく、「chop」は、多義語のようですが、「(インド・中国で)官印、免許状、許可証。(英略式)品質(quality)」の、こちらの意味ではないでしょうか。
結局、調べた範囲では、不明でした。
30年前に大学の一般教養の商学の授業で、卸有利の時代から、交通・広告の進歩に伴ってメーカー有利の時代になり、また流通有利の時代になりつつあるという話を聞きましたが、商標制度は19世紀・20世紀的な面があり、メーカーの時代の雰囲気がします。
21世紀になり、ユニクロのようなSPA(製造小売業)の時代になりつつあります。時代は卸有利の時代にもどるのか、あるいは、ダブル・チョップが増えるのでしょうか。
この点、商標法は、何の調整もしていません。小野先生のいうように、弱肉強食の世界です。