Nishinyの商標・ブランド日記

商標・ブランドの情報です。弁理士の西野吉徳のブログです。

新・商標法概説(その7)

商標に隣接する標識

ここでは、商標と用語が混同されやすいものについて、比較をして説明しています。

  1. 商標と意匠
  2. 商標と著作物
  3. 商標とスローガン
  4. 商標と商品の形態
  5. 商標と氏名
  6. 商標と商号
  7. 商標とサービス・マーク

 

重要だろうと思ったのは、商標と商品の形態です。ドイツ商標法は商標法において商品の形態を保護し、イギリス法はゲット・アップ、アメリカ法はトレード・ドレスで保護するとあります。

これらは、物品の外形について、商品それ自体、その包装、容器などの外形のみならず、商標に関する広告看板等の形状なども場合により保護し、平面的なものであると、立体的なものであるとを問わず、商標と同様な保護をするとあります。

 

そして、商標法に規定された商品形態の保護と不正競争防止法における保護について、ドイツ法は、「優先の原則」で抵触関係を決定するとしています。

すなわち、商品形態が取引上で適用するに至った日と登録商標の出願日といずれが先であるかによって、両標識間の優劣が決せられる。

不正競争防止法における周知の商品形態の保護と立体商標登録との抵触関係については、わが国においては、なお議論が統一されていないとします。

 

コメント

立体商標と、不正競争防止法の周知の商品形態の保護の優劣ですが、本の記述ではドイツ法では不正競争防止法は、「商品形態が取引上で適用するに至った日」とあり、商品形態が取引上で周知・著名になった日ではありません。

周知・著名でなくとも、使い始めれば、その日が優先日になるとすると、商品形態については、立体商標の出願日と使い始めた日の、優先順位で決することになります。

 

ドイツ法は登録主義といいますが、この部分は使用主義との折衷です。

 

実際の商品発売日と、商標出願日をする日とでは、業種にもよりますが、発売の3ヶ月~1か月前には、商標形態も特定され、商標出願を出せる状態にあると思います。

そういう意味では、発売日と出願日は近接しつ日付の争いです。

 

日本では、商品形態は、意匠で出願して、商標出願するのは周知になってから後追いで出願することもある、という程度の運用が多いと思いますので、ドイツ法の想定する状態はめったにない話なのかもしれませんが、ドイツ法の「優先の原則」は、面白いなと思いました。

 

この「優先の原則」を、小野先生は立体商標のところで、紹介していますが、もし、通常の平面商標でこの「優先の原則」を持ってきたら、どうなるのかと思いました。

同じ商標が、一方は、2020年6月24日に出願して、もう一方は、2020年6月25日に発売するというのではあれば、出願した方が勝ちます。

しかし、出願日は同じで、発売日が2020年6月23日なら、先に発売した人が勝ちます。

 

衡平の感覚としては、先に発売した人を勝たせても良いように思います。これを当事者間だけの話にするか、より強い効力を発売に与えるかはありますが。

ドイツ法では、平面商標については、実際、どうしているのかなと思いました。

 

ドイツ 商標法 2 | 経済産業省 特許庁

特許庁の訳を見ると、4条ですが、登録を取得するか、あるいは、取引において商標を使用すれば(二次的意義を獲得している場合に限る)、商標が保護されるとあり、商標登録と先使用に、商標保護に優劣はなく、どちらでも商標の保護が発生するようです。

 

登録と先使用間の優劣は、一般的に、登録は出願日を基準に、先使用は先使用日になるんでしょうか。

ドイツは、登録主義と習ってきましたが、ここ次第によっては、登録主義と使用主義の折衷制度のようです。

 

使用義務違反の商標は違法であったり、不使用では権利行使できなかったり、ドイツ法は深いですね。