商標の機能
基本的な機能を、識別機能としながら、そこから生じた機能として、出所表示機能、品質保証機能、広告機能があるとします。
強い商標(造語)、弱い商標(品質・性能表示語)とありますが、弱い商標でも永年使用すると強い商標になることもあるとします。
1.出所表示機能:
その商品又は役務の出所を表示する機能。
出所表示機能は、商標の識別力に由来。出所表示力により、品質保証機能、広告機能が出てくる。
一定の出所認識があれば良いとされる。
営業者から眺めた場合の機能。
2.品質保証機能:
同一の商標には、同一の品質(質)を有しているという需要者からの期待があり、商標はそのような期待に応える作用をする。
購買者から眺めた場合の機能。
一定の品質であるという需要者の期待であり、営業者はその商品の品質の維持改良に努める。
品質保証機能が、広告機能の元になる。
●品質保証機能に関して、欧州では、選択的販売制度と安売り店によるイメージの毀損という論点がある。
3.広告機能:
商品・役務を広告宣伝する作用。需要者は商標を記憶し、商標自体に一定のイメージを思い浮かべ、その商標を付した商品・役務に愛着さえ覚える。サイレントセールスマン。
広告には多大の費用がかかり、商標に化体した価値も極めて大きい。
商標の財産性(価値評価、ライセンス)は、商標の広告機能にある。
●広告機能へのタダ乗り(Free-ride)の防止が必要で、商標の広告価値の希釈化(ダイリューション:ドイツの理論をアメリカが借用)や商標のモチーフ侵害などの法律問題が生じる。
コメント
ここでは、通常の説明と同様に、出所表示機能が出ています。本のはじめの方で、識別機能、品質保証機能、広告機能だけだったとのとは違います。
それはさておき、機能論は、侵害論だなと思いました。登録要件論に、多少は絡むのかもしれませんが、侵害判断の理由になる感じです。
通常の出所混同を中心とした侵害(25条、37条)は、出所表示機能に絡むものですね。
同意書を認める国は、基本は当事者が混同しないから同意書を認めるのであり、混同するなら、同意書が発行されるようなことはありません。
さて、本の後ろに説明があるのですが、
「選択的販売制度」とは、化粧品とかの豪華な製品を、特定の店だけで販売して、一定の良いイメージを維持する制度だそうです。
真正商品を安売りされると、商標のイメージ、広告機能が害されるとあります。そのため、選択的販売制度下の真正商品の安売りは商標権侵害なるという主張があるそうです。欧州では、有力学説が支持しているとあります。
タダ乗り、希釈化は分かるとして、モチーフ侵害というのは、何かな?と思いました。
「モチーフ」ですが、物品と離れた単なるモチーフの侵害は、意匠権侵害ではないとか、あるいは著作権で見る言葉のようです。
商標の場合は、BOSSとBOSU、PUMAとKUMA、フランク・ミュラーとフランク三浦、このあたりのことでしょうか?
出所混同は生じないが、商標のイメージを借用している、イメージを害するということで、品質保証機能や、広告機能の侵害と構成することができるのだろうと思いますが、原告が出所混同を中心に立論すると、負けてしまう可能性が高いように思います。
商標の財産的価値の毀損も、立証が困難ですので、品質保証機能を害するあたりが証明できないと苦しいのかもしれません。
選択的販売制度は、重要な論点かもしれません。アップルのやっている家電量販店への契約などは、まさにこれではないでしょうか。
ダイリューションが、元々はドイツ法理論であり、よって、日本法にも容易に適用できるものという話は知りませんでした。