Nishinyの商標・ブランド日記

商標・ブランドの情報です。弁理士の西野吉徳のブログです。

図書館の利用履歴

消去が原則

2021年6月13日の朝日新聞に、図書館では貸し出し履歴の保存については、消去が原則であったが、徐々に利用者本人に履歴を提供するサービスが広がりつつあるという記事がありました。

  • ネットでは書籍の購入履歴が蓄積され、便利
  • データ活用を求める潮流
  • そのため、最近は公立図書館でも、貸し出し履歴の保存ができるようになってきている
  • 従来、図書館では返却後に貸し出し履歴を消去するケースが多かった
  • 利用者の思想・信条を類推できるため
  • 日本図書館協会の「図書館の自由宣言」は、利用者の読書事実を外部に漏らさないと明記
  • 利用者の秘密を守るために履歴を保存しないのが原則
  • 図書館全体で新たなルールが必要

というような内容です。

 

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図書館の自由に関する宣言」は、下記にあります。

図書館の自由に関する宣言 (jla.or.jp)

 

第3 図書館は利用者の秘密を守る

  1.  読者が何を読むかはその人のプライバシーに属することであり、図書館は、利用者の読書事実を外部に漏らさない。ただし、憲法第35条にもとづく令状を確認した場合は例外とする。
  2.  図書館は、読書記録以外の図書館の利用事実に関しても、利用者のプライバシーを侵さない。
  3.  利用者の読書事実、利用事実は、図書館が業務上知り得た秘密であって、図書館活動に従事するすべての人びとは、この秘密を守らなければならない。

 

読書事実を外部に漏らさないとありますので、本人への情報提供は問題なさそうです。ハッキングされて情報が漏れるようなことが起こった場合は、別の判断です。

また、令状による場合は、例外とありますが、令状なしの捜査協力要請で、情報を出すのであれば、この宣言違反です。

このあたり、朝日新聞の記事の掘り下げがあまりありません。

 

図書を見ると、その人の思想・信条は分かる可能性があり、令状なしの情報提供は、表現の自由・知る権利の関係で問題はありそうです。

 

最近、図書館は公立図書館であっても、指定管理事業者に業務委託していたりします。このような事業者の場合は、警察などから要請されると断ることも難しい可能性があります。

 

もろもろ考えると、初めから情報を蓄積しないというのは、一つの方法ですが、図書館カードの貸し出しの昔ならばいざ知らず、現在のアマゾンの購入履歴などを見ていると、やはりデータは提供してほしいように思います。

 

朝日新聞ではカーリルという図書館関係のIT企業の代表の言葉を借りて、発言していますが、図書館全体で考えるべきテーマのようです。

 

 

 

消費者庁 特定商取引法違反

金融関係もやっているのか

2021年6月7日の日経で、消費者庁が、VISION社が、ピクセル&プレスという別会社を名乗って、特定商取引法違反のUSBメモリーの販売預託商法を展開しているとして、消費者安全法に基づいて、破綻リスクが高いという公表をしたという話がありました。

USB預託別社名で勧誘 消費者庁「破綻のリスク」: 日本経済新聞 (nikkei.com)

  • VISION社は、電話やカラオケなどのアプリが入っているUSB商品「ライセンスパック」を約60万円で販売する契約を締結
  • 3年で、72万円の賃貸料を支払うとしている
  • 2月までの1年5か月で、674億円を集金。破綻すれば巨額の消費者被害になる
  • 消費者庁は、VISION社とその前身のWILLを調査し、自転車操業状態と判断し、2021年3月にVISION社などに業務停止命令や業務禁止命令
  • しかし、ピクセル&プレスという別会社名を名乗って勧誘を続けているとして、社名公表

とあります。

 

コメント

消費者庁は、景表法や表示関係の省庁であり、その命令やお知らせは、参考になる事例が多いので、消費者庁のWebサイトはよく見ます。

食品、化粧品などの話が多いかと思っていたのですが、このような金融関係の問題も取り扱っているようです。

 

今回の話は、次にありました。

ピクセル&プレス株式会社の名義で行われる「CCPシステム」又は「SHKビジネス」と称する役務の訪問販売に関する注意喚起(VISION株式会社等と同種又は類似の消費者事故等のおそれについて) | 消費者庁 (caa.go.jp)

 

そういえば、昨日のアフィリエイト広告も消費者庁の検討会でした。 

nishiny.hatenablog.com

 

消費者庁ができた理由、どのような仕事をしているのか、Wikipediaに記載がありました。

消費者庁 - Wikipedia

福田康夫総理の肝いりで、2009年に出来た内閣府の外局であり、

消費者行政の司令塔として、消費者の安全、安心にかかわる問題について幅広く所管し、消費者の視点から監視する強力な権限を有する消費者庁を来年度に立ち上げ、早急に事務作業に着手する

とあります。

 

表示、取引、安全など、相当、広範囲な法律を管轄しています。景表法だけでなく、消費者契約法製造物責任法消費者基本法個人情報保護法など、広範囲の法律を監督しています。

 

雑多なものを集めた感じもしますが、表示、取引、安全、消費者保護を集めたもので、重要な法律ばかりのようです。

消費者庁のアフィリエイト広告規制

検討会がスタート

20201年6月11日の日経に、消費者庁アフィリエイト広告の規制についての検討会をスタートするという記事がありました。

ネット広告、監視強化へ 国が議論: 日本経済新聞 (nikkei.com)

  • アフィリエイト広告では、閲覧者が商品を購入すると広告業者(アフィリエイターという外部広告業者)に報酬が入る
  • そのため、品質や効果を誇大にうたったサイトが目だつ
  • 悪質なものは、1週間で肌のシミが確実に消えるなど
  • JAROへの苦情は、2020年に5531件
  • 法的には、景表法の不当表示に該当
  • しかし、景表法では、商品・サービス供給事業者のみが対象
  • 食品や医薬品以外では、不当表示の責任は広告制作者に及ばない
  • そのため、消費者庁有識者の検討会をスタート
  • 商品・サービスの事業者に、広告にまで責任を持ち、内容の適正さをチェックすべきという意見あり
  • 規制には、表現の自由との関係が重要

とあります。

コメント

通常の広告であれば、商品・サービスの供給事業者が、直接の広告主です。広告主は直接内容についてコメントして、指示を与えています。広告が評価を得たような場合には、広告代理人やクリエイターの名前がでることもありますが、広告に問題があれば、真っ先に非難されるのは、広告主です。

当然、広告主は、全身全霊をかけて広告内容をチェックします。これまで身近に宣伝の人を見ていましたが、複数名のチェックの目、部長の目でチェックし、重要なものは役員や社長の目でチェックしていました。

 

これに対して、アフィリエイト広告については、広告主は野放しになりがちです。責任問題になるのが怖い感じがしますので、大手企業はあまりアフィリエイト広告を使っていなかったのではないでしょうか。

 

大手企業がやっている手法としては、記事風広告というものがあって、一見すると新聞記事なのですが、記事のどこかに、広告である旨の表示があるケースがあります。これは、新聞記事には客観的であるというイメージがあるので、その客観性を活用しようというものです。消費者としては、ちょっと紛らわしいところがありますが、既存のマスコミ広告であれば、広告主も、媒体社も、JAROもありますので、問題になるようなものはほとんどないと思います。

 

アフィリエイト広告についての関連資料は、下記で見ることができます。

第1回 アフィリエイト広告等に関する検討会(2021年6月10日) | 消費者庁 (caa.go.jp)

 

まだ、方向性が完全に定まっている訳ではないのでしょうが、当該広告制作者、広告主、ASP、行政など、すべてのアフェリエイト広告の関係者に、それぞれ一定の義務がかせらるのではないでしょうか。

 

責任が明確化させれ、苦情処理のルートがきっちりできると、大手企業もアフィリエイト広告を活用するようになるのかもしれません。

実際、誇大広告の例があるので、何らかの対応手段を講じることは必要な時期なのではないでしょうか。

ニトリHOME'S

薄緑色ではなくオレンジ色

2021年6月12日の朝日新聞に、ニトリと島忠の融合店がオープンしたという記事がありました。

 

  • 埼玉県さいたま市にオープン
  • 融合店の店名は、「ニトリホームズ」
  • ホームセンターは「ホームズ」ブランド
  • 融合店は、両社のほぼ全ての商品を置く大型店
  • 1階は日用品
  • 2階は低価格のニトリの家具と、島忠の高価格ブランド品を比較検討できる
  • 数年かけて融合店の効果を見極めて、全国展開する

とあります。

 

看板ですが、長方形の中に、白抜きで、上段にカタカナで「ニトリ」と、下段にローマ字で「HOME'S」とあります。

 

コメント

 5月の段階で、ニトリが島忠ブランドを廃止し、「ニトリホームズ」にブランドを変更するという記事がありました。

nishiny.hatenablog.com

 

これまで、ニトリは、「ニトリダイニング」でさえ、暖色系ではなく、薄緑色のニトリを使っていたので、今回の薄緑色にするんだろうと思っていました。

通常は、飲食業では食欲を想起させる暖色系が多く、薄緑色は珍しいと思います(スターバックスは緑色ですが)。

 

しかし、朝日新聞の記事を見ていると、新ブランドはオレンジ色です。このオレンジ色は、これまので島忠Home'sのオレンジ色を、そのまま使っているように見えます。

 「島忠」というブランドは消しましたが、「HOME'S」というブランドは、生かしていこうという意味だと思いました。

 

薄緑色のブランドカラーは大切なものとすると、ニトリの戦略は一貫性がないように思いますが、どういうことなのでしょうか?

飲食業よりは、近い業態のホームセンターですので、ここは薄緑色で押すべきではないでしょうか?

 

全く別の話で、少し気になったのが、業態は違うのですが、「LIFULL HOME'S」です。本田翼さんのCMで有名です。こちらも「HOME'S」です。

住宅情報サイトについての「HOME'S」ですので、「HOME’S」は、識別性が高いとは言えないと思います。要部は、「LIFULL」の部分でしょうか。

 

ブランド表記に、特徴があるとすると、アポストロフィエスとしている点ですが、「ニトリHOME'S」も「LIFULL HOME'S」も、この点は同じです。アポストロフィエスは、所有格だろうと思いますが、両社とも、どのような意味を込めているのでしょうか?

【ホームズ】不動産売買・賃貸・住宅情報サイト (homes.co.jp)

 

ただ、「ニトリ」や「LIFULL」というコーポレートブランドがあり、「HOME'S」は識別性が低いとすると、一般論としては、区別はできそうです。

株式会社LIFULL | あらゆるLIFEを、FULLに。

 

家具や住生活のブランドの「ニトリHOME’S」と、住宅情報サイトの「LIFULL HOME'S」は、出所混同をするかというとしないと思いますが、同じオレンジを使った段階で、似てはきます。

 

商標的には、そもそも商品・役務が非類似ですし、両商標の要部は「ニトリ」と「LIFULL」であり、「HOME'S」というサブブランドレイヤーの話なので、商標法的には十分に区別可能となりますが、現実のビジネスの関係では気にはなります。

 

 

「HOME'S」を使いだしたのはどちらが早いのか、オレンジ色の使用はどちらが先なのかを明らかにして、徹底的に争う方法もありますし、あるいは、出所混同も不正競争でもなく、事実上共存している状態が続くのかもしれません。

どちらもありうるなと思いました。

毎日新聞の風刺漫画

偕成社社長の反論と毎日新聞の回答

2021年6月5日付の毎日新聞に掲載された、「はらぺこあおむし」を素材にした、IOCや政府に対する風刺漫画が、批判されています。

「本当に残念」「猛省を求めたい」 はらぺこあおむし風刺漫画に版元激怒...掲載の毎日新聞「真摯に受け止める」: J-CAST ニュース

 

「はらぺこIOC 食べまくる物語」というタイトルで、IOCのバッハ会長、コーツ副会長、パウンド委員が、「放映権」と書かれたゴリン(五輪)の実をむさぼっています。バッハ会長の横には東京で会いましょうとあります。また、菅首相がゴリンの木に水やりをしながら、「犠牲が必要?!」と言っています。

 

これに対して、「はらぺこあおむし」の出版元の偕成社の今村正樹社長が抗議文を出しています。

風刺漫画のあり方について | 偕成社 | 児童書出版社 (kaiseisha.co.jp)

 

ちょっと長いですが、引用します。

風刺の意図は明らかで、その意見については表現の自由の点から異議を申し立てる筋合いではありませんが、多くの子どもたちに愛されている絵本『はらぺこあおむし』の出版元として強い違和感を感じざるを得ませんでした。

はらぺこあおむし』の楽しさは、あおむしのどこまでも健康的な食欲と、それに共感する子どもたち自身の「食べたい、成長したい」という欲求にあると思っています。金銭的な利権への欲望を風刺するにはまったく不適当と言わざるを得ません。

作者は多分ニュースでカールさん逝去の報を知り、「偲ぶ」という言い方をしていますが、おそらく絵本そのものを読んでいないのでしょう。もし読んだうえでこの風刺をあえて描こうとしたのだとしたら、満腹の末に美しい蝶に変身する結末をどのように考えられたのでしょうか。

風刺は引用する作品全体の意味を理解したうえでこそ力をもつのだと思います。今回の風刺漫画は作者と紙面に載せた編集者双方の不勉強、センスの無さを露呈したものでした。繰り返しますが、出版に携わるものとして、表現の自由、風刺画の重要さを信じるがゆえにこうしたお粗末さを本当に残念に思います。日本を代表する新聞の一つとしての猛省を求めたいと思います。

 これに対して、毎日新聞は、J-CASTニュースに回答し、「掲載した風刺漫画は肥大化するIOCに対する皮肉を表現した作品です。今回のご指摘を真摯に受け止め、今後の紙面作りに生かしてまいります」としています。

 

コメント

毎日新聞の風刺漫画は、「はらぺこあおむし」のファンの気持ちを無視してしまって、ファンが怒っているいるようです。偕成社の抗議文は社長は、ファンの気持ちの代弁のような気かがします。

 

また、偕成社の社長のいうように、最後に蝶になるという点まで含めて、「はらぺこあおむし」の作品の意図や全体像を理解したうえで、この風刺漫画は描かれていないというのは、その通りだろうと思います。

 

法的には、「はらぺこあおむし」の美術の著作物に対する著作権侵害ということなんでしょうが、今回は、「はらぺこあおむし」と「はらぺこIOC」にかけている(「あおむし」と「あいおーしー」が発音的に近い)という言葉遊びがあるので、余計に「はらぺこあおむし」との類似性が出てきます。

 

偕成社社長は、どうせ風刺画やパロディにするなら、その作品を本当に理解した上で、やってくれと言っていますので、なかなか難しい要望です。

 

今回は、著作物性、依拠性、類似性などが、明らかなので、作者のが亡くなっており著作者人格権の同一性保持権の問題はないにしていも、毎日新聞も、ちょっとやりすぎたかなという気がします。

 

法的には、パロディとして、著作権侵害が否定されるかどうかですが、明文のパロディ除外規定も、フェアユースの規定もない日本ですので、現行法では難しいのではないでしょうか。

パロディ - Wikipedia

 

ただ、よく聞く話ですが、パロディとして認められるには、ウィットが利いており、なるほどというという知的なものが必要といわれます。今回のものに、それがあるかどうかです。

今回は、はらぺこあおむしのファンの気持ちを、理解していない。ファンを敵に回してしまっている意味では、風刺画ではあってもパロディとはなっていないのかもしれません。

 

 

偕成社表現の自由を認めるとしていますので、訴訟等にはならないようです。それに対応して、毎日新聞も早々に謝罪的な文章を発表していますので、法的にはこれで一見落着だろうと思います。

 

もし、偕成社側が著作権侵害で損害賠償請求や謝罪を主張した場合、毎日新聞も反論せざるを得なくなり、日本の裁判所では、著作権侵害と結論がでる可能性が高いものの、パロディとして認めらるとか、風刺漫画とパロディの差とかの判断が出たかもしれず、当事者は大変ですが、どんどん争った方が、議論が深化するためには良いのかなと思いました。

毎日新聞としては、裁判になったら負けると分っていて、それでもインパクトがあるので、東京オリンピック中止の意図を込めて、GOを出したというところでしょうか。

「踊ってみた」の著作権管理

ブロックチェーンで、「n次創作」動画管理

2021年6月7日の日経に、「踊ってみた」など「n次創作」について、ブロックチェーンを利用した著作権管理が進んできているという話題がありました。

「踊ってみた」著作権を整理: 日本経済新聞 (nikkei.com)

  • オリジナルの作品を元に、2次的、3次的に別の作品が派生して生まれるため、「n次創作」という
  • 「YOASOBI」の「夜に駆ける」も、小説の投稿サイトの作品を元に生まれた
  • 収益を上げる投稿者の4割は、原著作者に許諾を得ていない
  • 著作権侵害を恐れて投稿を自粛している潜在的な投稿者も多い
  • n次創作と著作権保護を両立するため、ブロックチェーンを使ったNFT(非代替性トークン)技術の活用
  • 原権利者に、収益が還元される
  • 中国の上海七印情報技術は、ニュース記事や画像の著作権保護に強み。海賊版サービスを提供
  • 広州では、動画サイト提供者が権利者から許諾を得る最善の努力義務
  • 韓国は軽微な侵害の刑事罰を除外して、委縮を防ぎ、透明性ある仕組みを整える

とあります。

 

コメント

ブロックチェーンという言葉が、著作権管理でも出てきています。

先日見たのは、ブロックチェーンをつかって綿花の産地について、 証明しようという話でした。

nishiny.hatenablog.com

 

ブロックチェーンを使った、著作物管理は、昨年の4月頃にもニュースになっていた。 nishiny.hatenablog.com

 

ブロックチェーンが進めば、模倣品や海賊版の被害が大幅に防止できます。 

nishiny.hatenablog.com

 

しかし、技術があっても、何らかの仕組みが必要であり、相当コストがかかるので、デジタルコンテンツや医薬品などからスタートすることになると思います。

 

各種の方式が乱立すると面倒です。デファクトでよいので、圧倒的に人気のある仕組みが出てこないかなと思いました。

 

ECの場合は、真正性を担保する技術や手法としては、ブロックチェーン以外のものもあると思います。

中国のアリババなどは、企業に商標登録証の提出や出荷同意書の提出を求めますが、これも真正性を担保するものです。日本の楽天やアマゾンの出品では、ここまでは求めているのでしょうか?

 

ブロックチェーンなどの仕組みで、製品の真正性が担保されるようになれば、商標の役割も、出所混同の防止から、商品選択を促進、サポートするという宣伝広告機能の役割を中心に再整理することができるように思います。

すでに、アメリカでは、出所混同防止ではなく、サーチコスト理論に一定の支持があるようです。サーチコスト理論は、需要者のサーチコストの削減が、標識の本質的機能であるというものです。

 

まだ、出所混同の防止と、サーチコストの削減と、どちらが正しいのは、よくわかりませんが、これらの新技術は、法制度にも、影響があるのではないかと思います。

 

nishiny.hatenablog.com

 

模倣品や海賊版が、無理をせずとも、少なくなる技術や手法が出てくればと思いました。

五輪中止と賠償義務

日本に賠償義務なし

2021年6月9日の日経の私見卓見に、立教大学名誉教授(民法)の角 紀代恵先生が、五輪中止、日本に賠償義務なしという寄稿をされていました。

五輪中止、日本に賠償義務なし 角紀代恵氏: 日本経済新聞 (nikkei.com)

  • 東京都と日本オリンピック委員会IOCと「開催都市契約2020」を締結
  • 「戦争状態、内乱または大会参加者の安全が深刻に脅かされると信じるに足る合理的な根拠がある場合」に「IOCは本大会を中止する権利を有する」
  • 日本に中止の権利がないと明記しているわけではなく、法的には日本側も五輪の中止を決めることができる
  • また、IOCには執行力はなく、大会の実施を強制できず、当事者がその気にならなければ実現できない契約は、実現を強制できない
  • 契約には、日本の一方的破棄について損害賠償義務の明記がない
  • 準拠法に基づき賠償責任を判断するが、契約の準拠法はスイス法
  • 大陸法では債務者の責めに帰すべからざる事由による場合は、損害賠償責任は負わない
  • コロナ禍は日本の責めに帰すべき事由ではなく、日本に損害賠償義務はない

コメント

正確なところは、原文で読んでもらいたいのですが、疑問にスパッと答えているなと思いました。

 

損害賠償については、もし、スイスで裁判を起こして数千億円の損害賠償の判決が出ても、スイスにある財産は差し押さえられるかもしれませんが、当該外国判決を日本の裁判所が承認して、執行に至ることはないと思っていました。

(直接の契約者は、東京都とJOCですので、スイスにはほとんど財産はないと思います。)

 

国際私法の外国判決の承認は、手続き的な話ですが、そもそも、コロナ禍は日本側の責めに帰すべき事由ではなく、損害賠償責任は負わないという説明は、腑に落ちました。

 

そもそも、日本がやりたくないというのに、強制はできないだろうなと思っていました。

この点は、当事者がその気にならなければ実現できない契約は、その実現を強制できないという説明です。

これは画家が絵を描く契約をしても、画家が絵を描きたくない場合には、強制はできないという考えだろうと思います。自動車整備であれば、他の修理業者がいますので、代替して実現することも可能ですが、その人に絵を描いてもらいたい場合は、強制的に実現することは不可能です。

この不作為については、直接強制、代替執行ではなく、間接強制しかありません。さらに、誰が間接強制するのかという問題になります。

 

IOCも強がってはいますが、もしも日本や国際的な世論が、中止や延期を選択したら、どうしようと、内心、相当に苦しんでいるのではないかなと思いました。