Nishinyの商標・ブランド日記

商標・ブランドの情報です。弁理士の西野吉徳のブログです。

「マリカー」の議論(4)

知財・法務的な視点

もし、私が任天堂なり、マリカーなりのの知財の担当者なら、どのようなことを考えたでしょうか、また、どうすればよかったのでしょうか。

①なぜ、マリカーは、任天堂の使用許諾を得ていなかったのか?

今回、マリカーは、弁護士、弁理士に相談したといいますが、実際、どのようなコメントをもらっていたかは報道からは判りません。ただ、結局、差止の裁判を起こさるというのは、企業の知財・法務としては、失敗とは云わないまでも問題なしというレベルではなかったことになります。

今回、「マリカー」という商標権を、マリカーが持っていることで、商標や社名は問題なく使えるという理解があるように思います。そこで止まっていればよかったのですが、コスプレ衣装の貸し出しをした段階で(サービス利用者の個人に責任を帰すことができなくなり)、全体的には、任天堂のキャラクターの価値を利用していると整理してよいと考えます。

キャラクターの衣装の貸し出しをする段階で、任天堂の許可を求めれば、いろいろな業務指導や対価要求があるかもしれませんが、なんとかOKをもらい、Win-Winの関係に立てたかもしれません。

Pokemon GOの運営会社も資本関係のないベンチャーと聞きます。キャラクタービジネスというものはラインセンサーは商品・サービスを出さないわけですので、ライセンシーであるマリカーが合法的にキャラクターを活用できる可能性はあったと思います。

マリカー側としては、当初からどうせお願いしても無理と決め込まずに任天堂と交渉すべきです。大会社でも、可能性はあったと思います。

② 私が任天堂の担当者として、この会社に、OKするでしょうか?

私が任天堂のキャラクターライセンスの担当者だとして、今回のマリカーOKを出すでしょうか。

まず気になるのが、小さなカートで公道を走ることです。キャラクターのコスチュームの集団が事故を起こしたら、最終的に運転者個人の責任ということになっていても、カートの運営会社の監督指導も問題になり、そこにライセンスしている任天堂にも被害が及ぶ可能性はあると思います。よって、私なら、遊園地の中のゴーカートならOKを出しますが、公道のカートはNGと言います。

(ちなみに、私はメーカーの商標・ブランド担当者だったので、判断は保守的です。キャラクタービジネスの世界では、前向きな判断がされるのかもしれません。)

③ 訴訟をするかどうかの判断

任天堂としては、手間や費用をかけて交渉し、裁判までして、マリオカートの世界観を守るべきかどうかの判断を迫られます。マリオカートの前に、任天堂のキャラクターは、マリオだけでもありませんから、守るべき対象は沢山あります。任天堂としては限られた予算で、何を守るかの選択が必要です。

個人が趣味で走らせているカートで、マリオのキャラクターにふんした人が乗っていても、任天堂は放置するでしょう。今回は、事業として大規模であり、話題になっているので、止めざるを得なかったのではないでしょうか。

今回、任天堂が、訴訟をするという判断をしたのには、「マリオカート」には、守るだけの価値がある、あるいは、今、守っておかないと訴訟費用以上の悪影響がでると考えたといことになります。