Nishinyの商標・ブランド日記

商標・ブランドの情報です。弁理士の西野吉徳のブログです。

イトーヨーカドーの看板(2)

不正競争防止法や商標法から見ると

一部の人は思っていると思うのですが、関西には滋賀県が地盤の平和堂アルプラザ)があります。平和堂のマークは、配色が違い鳩が二羽いる、青ではなく緑が使われているという差はあるのですが、よく似ています。下記の看板をご覧ください。

平和堂 テナント募集

このロゴの採用はWikipediaによると1974年ということです。一方、イトーヨーカドーの鳩のロゴはWikipediaによると1971年のようです。小売等役務の商標は2007年から、サービスマーク登録制度は1992年からですので、当時は全国をカバーする権利はないと考えるのが自然ですので、不正競争防止法違反にならない限り使用でき、双方ともドミナント戦略ですので出所混同はなかったのだと思います。1974年から2005年まで31年間共存したのですから、当事者同士は今更問題にすることはない話だと思います。

 

もう一つ商標的なトリビアですが、2005年から12年間使っておらず、3年以上の不使用期間がありますので、イトーヨーカドーの鳩のマークは不使用取消審判で取り消される可能性があります。

1996年の法改正前は、商標の更新に使用証拠が必要でしたが、今は不要となっています。よって、イトーヨーカドーに鳩のマークの商標権はあると思います。また、商標のライバルになる平和堂は、過去の経緯からも、何もしないと思います。しかし、模倣品業者を含めて権利にアタックしてくる人もいるので注意が必要です。

商標管理からすると、ブランド変更をするときは、意図して不使用取消対策のために、一部商品だけ使い続けるという方法も検討が必要しかし、世の中には虎視眈々と企業の脇の甘さを追及する人もいます。イトーヨーカドーの日本全国のどこかの店舗では、こんなこともあろうかと、誰かが鳩のマークを使い続けていたでしょうか。

しかし、TOPは商標の不使用対策よりは、方針の不徹底を嫌がります。せっかく作った方針は、徹底することの方が企業としては意味があるからです。ここは、TOPにも商標の不使用取消審判を理解してもらい、TOP同意のもとで、一定の対策を取っておくべきと思われます。

※ 今朝(2017年3月29日)、新聞のチラシを見ていたら、イトーヨーカドーのチラシがありました。ホールディングのブランドの活用度合が大きかっただけで、事業ブランドの「鳩のマーク」はずっと使い続けていたのですね。すみません。買い物にも行っているのに、あまり見ていませんでした。ごめんなさい。看板の方が、訴求力があるということでしょうか。

2つのマークを使うことは、難しいですね。