Nishinyの商標・ブランド日記

商標・ブランドの情報です。弁理士の西野吉徳のブログです。

新しい裁定制度(ADR)

知財法制の一括見直し

2017年4月20日(木)の日経にで、知財法制の一括見直しの記事がありました。基本的には、IOTやビックデータの時代に「データ」を知財としてどう扱うかの話です。

www.nikkei.com

その中で、パテントトロール対策で、トロールに訴えられた企業が駆け込むことができる裁定制度を新設するという記載がありました。専門家が間に入ることで、乱訴を防ぐとあります。

下記の経産省の報告書が元ネタのようです。

www.meti.go.jp

標準必須特許をめぐる紛争を対象とし、特許法の改正も視野に入れ、行政が適正なライセンス料を決定するADR制度(標準必須特許裁定)の導入を検討すること

  • ライセンス契約や特許権侵害紛争を対象とし、中小企業等が使いやすいADR制度(あっせん)について検討すること

日経電子版に関連記事がありました。

www.nikkei.com

トロール対策だけではなく、中小企業が大企業を訴えたいときにも、この新裁定制度は有効ということでした。ADRの利用促進策でしょうか。

 

先日、弁理士会のADRの研修会に参加しました。専門家の弁護士・弁理士などが、間に入って、主としてビジネスとしての見地から解決策の提案をして、Win-WInの関係を作るのがADRという説明でした。しかし、ドメインネーム紛争を除き、ほとんど活用されていないことを知りました。また、Win-WInを実現するのは、説得が大変で、大変苦労するという話でした。間に入る専門家の努力や能力が必要なのが現状と思います。

 

一方、裁判は、民事訴訟の原則に則って主張のあった点を中心にすすめられますので、Win-Winを構築するのとはだいぶ違います。知財には法解釈論以外の部分が非常に多くあり、そのあたり非常に泥臭いビジネスです。日本では、企業の知財部がやっている交渉事の数は、実際に裁判になる件数の100倍以上?の件数があると思いますので、うまい制度を設計すれば非常に良いと思いますが、前述の実際のADRの少なさや、苦労を聞くと、どうするのかなと思っています。

 

通常、ADRは仲裁・調停で、特許庁は出てきません。必須特許を念頭にしているようですが、裁定というぐらいなので特許庁が絡むと思います。どんな制度設計か関心をもって見ていこうと思います。