2017年5月4日(木)の日経に、人気ロックグループの「イーグルス」のヒット曲である「ホテル・カリフォルニア」のモデルであるかのように営業しているのは、商標権侵害であるとして、ホテルに損害賠償を求める訴えが、カリフォルニア地裁に提起されたという記事がありました。
記事のポイントは、次のようなものです。
- メキシコのバハカリフォルニア州にこのホテルはある
- 1950年代は、ホテル・カリフォルニアと言っていたが、その後名称変更した
- 2001年に経営者が変わり、再びホテル・カリフォルニアというようになった
イーグルス側の主張は、
- 館内でイーグルスの曲を流している
- 売店で関連商品を販売した
- 商標活動の停止やこれまで得た利益の支払いを求めている
という内容でした。訴訟について、より詳しくは下記を見てください。
コメント
私が気になったのは、曲にも商標権があるのか?という論点です。
昨年、商標審査基準の3条のところが改正されていますので、ちょっと見てみました。ちょっと省略をしています。
1)「書籍」「レコード」等の商品又は役務について、商標が、需要者に題号等として認識され、かつ、当該題号等が特定の内容を認識させるものと認められる場合には、商品等の内容を認識させるものとして、商品の「品質」又は役務の「質」を表示するものと判断する。
2)題号等として認識されるかは、需要者に題号等として広く認識されているかにより判断し、題号等が定の内容を認識させるかは、取引の実情を考慮して判断する。
例えば、次の①②の事情は、商品の「品質」又は役務の「質」を表示するものではないと判断する要素とする。
① 一定期間にわたり定期的に異なる内容の作品が制作されていること
② 当該題号等に用いられる標章が、出所識別標識としても使用されていること
- 小説の題号や、曲のタイトル、映画のタイトルなどは、原則として、商品や役務の(品)質を示すとして、拒絶になります。これは、思想感情の創作的表現者である著作権者の作品は、商業ベースではなく小規模であり、また、商標調査や商標出願の手間をかけないためと解釈しています。
- しかし、単なる題号を超えるものがあり、その基準があります。
- ①で、定期的に異なる内容の作品が制作されているというものがあります。例えば、寅さんの「男はつらいよ」シリーズでしょうか。このようにシリーズされるものは、商品や役務の(品)質を示すものとは考えず、商標登録が可能です。アメリカなどでもそのように運用していました。
- ②は当たり前のことを言っていますが、商品化権のようなことを想定しているのなら、今回のホテル・カリフォルニア事件に近いですね。
どちらにせよ、財産的価値が発生したものは、マネジメント次第で、単なる題号ではなくなり、商標登録を得ることも可能なものになることが明確になっています。
このあたり、昔の商標審査基準より、良くなっていると思います。
芸能人の氏名やグループ名を商標登録したり、楽曲タイトルを商標登録したり、本気でマネジメントをして、財産的価値を高めようとすると、やるべきことは沢山あります。