昨年度、過去最多に
2017年6月30日の日経に、特許庁が(2017年版の)年次報告書を発行した件についての記事がありました。商標出願の件数が増えてきているので、商標のことが見出しになっています。
内容としては、次のようなものです。
- 2016年(暦年)の商標出願件数が14万件を超え、現行の商標制度下で、過去最多になった。
- 特に、中小企業の海外展開が進んでいる。
- 商標については、2年前から、音の商標や、動き商標、色の商標といった商標にも対象が広がったことが話題になり、「商標に対する認知度が上がっている」(特許庁)が理由。
- 2016年の日本の商標出願件数は、14万8024件。2015年は13万1299件で、1割強の増加。
- このうち、中小企業の出願が、7万8907件で、前年の6万4241件から2割強増加。
- 一方、特許の出願件数は減少傾向。
- 2016年は31万8381件で前年から微減。
- 理由は、特許管理にはコストがかかるので、大企業を中心に特許を取得する技術を厳選する傾向が続いている。
- 大学からの出願は活発で、2016年は7223件。東京大、東北大、大阪大の順で件数が多い。
コメント
この記事の元ネタは、こちらです。
商標の出願は、2011年に底をうって、そこから右肩あがりです。一方、特許はこの10年微減傾向が続いており、10年で2割減っているようです。
意匠・実用新案は、中小企業でも活用しやすいのだと思いますが、実用新案は大幅に減っていますし、意匠も微減傾向が続いていて、商標だけが伸びています。
経済のソフト化が進んでいますので、ますまず無形資産である知的財産権の重要性が増しているのですが、従来の特許、実用新案、意匠ではないもの、たとえば、契約関係や不正競争防止法や著作権に、重要性がシフトしているのでしょうか。
ちなにみ、各国での商標出願件数ですが、韓国が18万件(2016年)で、中国は300万件を超えている(2016年)と思います。人口は、中国は10倍、韓国は半分とすると、人口比では、韓国にだいぶ負けています。したがって、14万件で満足していてはいけないように思います。
また、商標が増えているのは、「新しい商標」がマスコミに取り上げられたことも理由であると思いますが、例の大阪の「PPAP」などを出している、ある特定の個人とその関連企業の出願(2万5000件)が出願件数にカウントされているのでしょうか。それを引くと、12万3000件に減っていしまいます。
経験から、一般に、企業は調子の良いときは、商標出願が増えると思っています。新規事業を考えたりする余裕があるためです。以前の会社でも、商標の依頼の多さは、事業部の調子の良さのバロメーターでした。 ある特定の個人は統計に影響をあたる異常な件数ですので、そのカウントの有無を示してもらいたいものです。
なお、この報告書は、特許庁などで無償配布しており、無くなり次第、終了ということです。