インド事業 脱提携先まかせ
2017年7月17日の日経に、クロールのインド代表の話が出ていました。www.nikkei.com
内容は、世界でリスクコンサルティングを手掛けるクロール(Kroll)のインド代表、レシミ・クラーナさんの談話で、次のようなものです。
- インドでは、税制改革など大規模な法整備が相次ぐ
- 企業が直面する事業リスクも変化。特に、汚職など不正のリスクや、下請け工場での過酷労働など人権侵害のリスク
- 当局の規制や国際世論は厳しいが、現地企業の意識はまだ低い
- 日本企業は現地事業を地元のパートナー企業に任せる傾向があるが、自社によるコントロールを強めることが、リスク管理の意味でも大切
というような内容です。
コメント
クロール(Kroll)の名前を久しぶりに見ました。模倣品対策の黎明期の1990年代に、ピンカートン(Pinkerton)と共に、よく聞いた会社名です。
最近のクロールは、どうしているのか思って調べると、次の記事がありました。
この記事によると、クロールは、次のように紹介されています。
- 米国で1972年に設立したリスク管理のコンサルティング会社
- CIAやMI6など世界の有力情報機関の出身者を多数抱える
- 企業の抱える不正や腐敗など表面には見えない「隠れたリスク」を調査し、依頼者に知らせる
村崎直子さんという方が代表のようです。京大卒、警察庁、ハーバード修士。汚職や知能犯罪調査、外務省出向時に国際テロやスパイ取締、拉致問題なども担当。10年クロール日本支社、15年から代表とありました。クロールらしい経歴の方ですね。
第一三共とインドのランバクシーの件が、紹介されています。M&Aのときには、法律事務所や、コンサルティング会社も入っていると思いますが、この種の事故の予防がなかなかできません。
クロールもM&Aを中心にしているようですね。非常に良いことだと思います。
M&Aは、銀行、投資銀行などからの話からスタートしますが、デューデリジェンスのときに、商標評価はあまりしていないようです。本来は、商標ポートフォリオを作成すべきです。金融機関やコンサルティング会社には、そのノウハウはありませんし、特許事務所が手伝っているという話も聞きません。当事者の報告ベースではないでしょうか。知財部門がチェックをする場合、時間との闘いがあります。結局、やっているのは、登録・出願件数と、重要問題の陳述程度ではないかと思います。
事業部門は、買収したくて仕方ないのですが、数年経って、商標が使えない国が多くて困ることになります。どこの国で使えるか、使えないのかの調査までするとすると、金融機関やコンサルティング会社やちゃんとした商標専門家のいない法律事務所では無理があります。M&A後に絶対にやっておくべき権利の名義変更まで含めて、特許事務所に依頼してもらえればと思います(名義変更は、本来、徹底的に変更すべきですが、まだまだ意識が低い会社が多いようです)。
その他、 特許事務所が、クロールのような「調査会社(興信所、探偵)」にお願いする、別の仕事として、商標の不使用取消審判のときの使用実態調査があります。最近は、インターネットでもだいぶ分かるようになりましたが、突っ込んだ話になるとわかりませんので、まだまだ、調査会社を使うことが必要になります。
最近、当時、クロールに勤めていた方に話を聞く機会がありました。
その方曰く、
- 香港のFact Finderという会社をクロールが買収して、模倣品対策を始めた
- しかし、その後、中国の模倣品対策は、一件20万円の現地の調査会社が主流になった(いわゆるモグラたたき)
- クロールがやると、どうしても、一件100万円のコストがかかる
- だいぶ前に模倣品対策はやめている
とのことでした。