Nishinyの商標・ブランド日記

商標・ブランドの情報です。弁理士の西野吉徳のブログです。

外国商標法の研修

青木弁理士の全体像の講義

少し前ですが、7月14日に事務所の近くの発明会館で行われた、ユアサハラ法律特許事務所の青木博通先生の外国商標法の研修会を受けました。

研修・講座のご案内|一般社団法人発明推進協会

 

今回のタイトルは「法体系の違いからみた外国商標制度の特記事項とリスク対策」で、サブタイトルとして「国際登録、米・欧・中・各国商標制度の特殊性と対応策」がついています。

 

事務所の外国商標のメンバーが、少し前に同様の講義を受けたのですが、私にも薦めてくれたので、受けることにしました。その時の主催者は発明推進協会ではなかったようですが、丸一日かけて外国商標制度を概観するのは同じです。200ページのテキストも基本は同じで、それが、毎回、最新のものにアップデートされているようです。

 

企業の知財部にいたとき、特許事務所の弁理士に期待していたことの一つに、自分の知らないことを質問して教えてもらうということでした。そういう意味で、雑学的なものも含めた知識も含めて、できるだけ幅広く知識をもっておくことは必要です。

最終的には、例えば、各国ごとの審査期間や、費用、各国の審査の特徴的な傾向、この国は色彩商標より無彩色が良いとか、各国の立体商標の必要図面数、各国の指定商品・役務の記載の留意事項とか、こんな質問があれば、即答できるようにしないといけないと思っています。仕事のコツのようなTips的な知識、現地代理人についての情報も重要です。

 

しかし、まずは鳥観図を頭に入れた上でないと、細かい知識を整理することができないので、全体像を説明してくれる今回の研修は私にとっては、ちょうどよい機会でした。

 

事務所は、発明会館のとなりなので今回の研修会は徒歩10秒でしたが、よく行われている日本商標協会や弁理士会の研修も、弁理士会館(商工会館)で行われることが多く、5分で行けます。

会社の知財部にいたときも、たまに弁理士会館などに来ていたのですが、大阪からですので、東京の研修に参加するというは費用も時間も大変でした。知財の研修会に簡単に参加できる=最新の知識を得ることができるというもの、虎ノ門に事務所を置く、大きなメリットだと思います。

 

さて、今回の研修で特に、印象に残った話は次のようなものです。

  • 英国商標法、特にCTM(EUTM)に入る前の英国商標法。商標と商品が同一の場合をダブル・アイデンティティと呼び、CTM以前は、商標権侵害はダブルアイデンティティのみを言った。類似関係は、Passing Off(詐称通用)で対応していた。→この話を聞いたのは、初めてだったのですが納得しました。類似というのは、個別事情で出所混同の幅が変わるはずのものですので、当事者が、異議なり、不正競争なりで争えば良いだけで、日本のように公的機関が画一的に類似範囲を決めるのは技巧が過ぎるのですが、そこを言い当てていると思いました。
  • 英国法の影響は強く、マレーシアが出願公告のことを、Publicationではなく、Advertisementというのは、参考にした時の英国法がそうだったから。→これは驚きです。さすがに英国法です。
  • 米国法も、(更新時の商標変更など認めてくれているのですが、)コモンロー上の商標権については、商標の同一性を強く求めているとのことです(Tacking)。→英国法のダブルアイデンティティに近い考え方と思いました。
  • 米国法では、日本で流行っている商標的使用論はなく、記述的使用を商標権侵害でなくすためには、Fair useで対応しているとのことです。→(類似もそうですが、)日本法が形式的画一的な判断が必要な法律構成をとっているので、商標的使用というわかりにくい議論が出てしまったのだと思います。

 

ちなみに、発明会館の上にセミナールームがあり、休憩室があるのですが、ここの書籍(特に商標関係)は充実していました。ただ、セミナー参加者だけが利用できるあり残念です。一般も使えるようにできないものでしょうか。

また、一階で、発明推進協会家計の書籍を販売しています。特許庁が入りにくくなり(これは大きな問題です。特許庁長官に解決してもらいたい内容です。)、地下の売店がセブンイレブンになって書籍コーナーがなくなっていますので、発明会館は貴重だと思いました。霞ヶ関ビルの書原だったと思いますが、専門書が買える本屋もなくなっていますので。