コストコが21億円の損害賠償金
2016年8月16日の日経夕刊に、ティファニーがコストコを訴えていた事件についての、ニューヨーク連保地裁の判決の記事がありました。
次のような内容です。
- コストコが、販売するダイヤモンドの指輪を「ティファニー」と広告
- これに対し、ティファニー社が、商標権侵害にあたると訴えた
- ニューヨーク連邦地裁が、2017年8月14日に、ティファニーの訴えを認めて、1940万ドル(約21億円)の損害賠償支払いを命じた
- 2013年にティファニーが起こした訴訟
- ティファニーの割引商品との誤った印象を消費者に与えたとして被害を訴えていた
- 一方、コストコは、「ティファニー」がダイヤモンドを使った指輪のデザインで一般名称として使われている、ティファニーの特徴である水色の包装を使っていないとして、商標権侵害に当たらないと主張していた
判決を見ないと詳細は分かりませんし、コストコも控訴すると思いますが、面白そうな事件です。ロイターの記事によると、次のようにあります。
- ダイヤモンド婚約指輪の販売に関して、1940万ドルの損害賠償の可能性
- 商標権侵害による逸失利益の3倍+利息の1110万ドルと、昨年10月の陪審員による懲罰的損害賠償825万ドルを加えた金額
- このケースでは、約2,500のリングしか扱われていない
- ティファニーは2013年にバレンタインデーにコストコを訴えた
- 裁判官は、コストコが、ティファニー以外の商品について、「セッティング」、 「セット」または 「スタイル」などの修飾語がない「ティファニー」を使用することを禁止
- コストコは、「ティファニー」は一般的な用語になっていると主張し、「ティファニー」単独での使用の言い訳にしていた
- 陪審員は、逸失利益の390万ドルではなく、550万ドルをティファニーに認めたが、裁判官は低い方の金額とした
コメント
たった2500個で21億円ということは、ダイヤモンド一つあたり84万円の損害賠償になります。3倍賠償と懲罰的賠償金があるとしても高いですね。
内容的には、商標の普通名称化の問題のようです。
「ティファニーセッティング」とは、ティファニーが100年以上前に考案した6つ爪でダイヤを固定した指輪のデザインを意味し、婚約指輪の定番デザインだそうです。
デザインは、下記のティファニーのWebサイトを見てください。
ティファニー社の指輪でなくても、このデザインを示すときは、業界では、ティファニーセッティングや、ティファニーセット、ティファニースタイルと言っているようです。
どうも、コストコは、ティファニーセッティング(セット、スタイル)と書かずに、省略して、ティファニーと書いてしまっていたようです。(事実関係は、判決を見ないと正確ではないのですが)
ティファニーも、婚約指輪のデザインに、ブリリアントカットのような、機能的な普通名称をつけておけばよかったのに、「ティファニーセッティング」という自己のブランドをつけてしまい、それが有名になり、普通名称化してしまったために、世間を騒がせているという面があります。
普通名称化を防止するためには、①一般名称も同時につける、②事例を見つければ警告する(EUTMや欧州各国商標法では、辞書等への普通名称化防止請求権が認められているようです)、という対策が必要になります。
コストコは脇の甘いところがあります。
一方の、ティファニーは、デザインの名称が普通名称化するほど有名になるなど、経営的には成功していますし、バレンタインに訴訟を提起するところなど裁判を活用したPR戦略の面もあります。ティファニーは上手くやっているという感じです。