Nishinyの商標・ブランド日記

商標・ブランドの情報です。弁理士の西野吉徳のブログです。

中国の知財侵害と通商法301条

米国の動きと中国の反応

2017年8月15日の日経夕刊に米国の動き、8月15日の朝日新聞に中国の反応の記事がありました。www.nikkei.com

日経の記事によると、次のような内容です。

  • トランプ大統領は、8月14日、中国による米企業の知財侵害が深刻として、通商法301条の適用を視野に調査を米通商代表部(USRT)に指示する書面にサイン
  • 米企業が中国進出時に技術移転などを求められる事例を調べ、中国の貿易制度が正当かどうか判断
  • 米領グアム沖へのミサイル発射計画に関連し、北朝鮮に影響力を持つ中国に通商面で強い圧力をかける狙いは鮮明
  • 通商法301条は、米当局に関税引き上げなどの制裁権限を与える

www.asahi.com

一方、朝日新聞の記事によると、次のような内容です。

  • 中国外務省の華副報道局長が、8月14日に記者会見し、米国の通商法301条に基づく調査について、「中米は話し合いを食い違いを解決の基本的な方法と決めている」と牽制
  • 華氏は、嫌疑について、2016年に中国で申請された発明や特許が世界の3分の1超を占めて世界一など「知財大国」と強調
  • 中国の知財保護の努力や進展、中国が自ら作り出したイノベーション主導の経済発展の成果を客観的に見てほしい
  • 北朝鮮への圧力を強めさせようという構図については、「一つの問題をもう一つの問題の圧力にするのは明らかにふさわしくない」

とあります。

 

コメント

三角関係ではありますが、軍事・外交の問題に、貿易問題が対策として出てきた事例と思いました。トランプ大統領は、やはりビジネスマンですね。

 

久しぶりに通商法301条という名前を聞きました。1989年から90年代に、日本企業が調子が良かったころ、米国が良く持ち出した話です。

貿易一般をスーパー301条と呼び、特に知財面をスペシャル301条と呼び、スペシャル301条で日本も監視国になっていました。

なお、日本は、2000年以降は、この監視国から外れているようです。

 

このタイミングで交渉のカードとして出す米国もやるなと思いましたが、今回の通商法301条の議論に、すでに知財大国というカウンターが出てきたところは中国もさすがです。

 

世界は米中関係を中心に動いていますが、中国は知財問題は自らのアキレス腱になるとして、国策として強化をしてきています。

資料で見たことがないので、真偽のほどは不明ですが、中国企業には外国出願時の補助金があるようで、出願にかかる費用よりも、多くのお金をもらえると聞いたことがあります。もしそうなら、これ自体、公平は競争環境かどうか疑問がありますが、これらの活動も含めて、最近の中国の知財強化策が、米国へのカウンターとして生きた形です。

 

今回のこの話も、落としどころがどうなるのか分かりませんが、関心をもっておこうと思いました。