Nishinyの商標・ブランド日記

商標・ブランドの情報です。弁理士の西野吉徳のブログです。

カジノと芸術劇場

横浜市・林市長「メリット」が説明できない

2017年8月30日の日経に、横浜市の林市長がカジノと芸術劇場について話をしているインタビュー記事がありました。

www.nikkei.com

インタービュー記事から、林市長の発言を引用します。

選挙中からIRに関してはニュートラル(中立)だと言ってきた。ニュートラルというのは賛成派と反対派の間に立っている意味ではない。私自身がメリットとデメリットを整理しきれていない。横浜市は政府との話し合いなどを進めているが、市民にメリットをまだ完全に説明しきれていない。

市としてのメリットとデメリットをはっきりさせたい。デメリットはすごく分かりやすいが、メリットがまだ私の中で腑に落ちていない。メリットとデメリットを整理するにはまだ時間が必要だ。 

 

政府も有識者会議や住民参加の公聴会をやっている段階で「こういうメリットがある」という考え方をはっきり出していない。IRは明確になっていないところが多く、今の状況ではスケジュール通りに(IR整備に)動くか疑問がある。

 

一方、芸術劇場については、非常に積極的です。これについては、タウンニュースの記事が分かりやすいと思います。

www.townnews.co.jp

 

コメント

7月の横浜市長選挙の争点は、カジノ賛成派と目されていた林市長がニュートラルと言い出したので争点にならず、結局、最大の争点が、中学の給食でした。「お弁当持参orはまべん」を続けるか、学校給食に変更するか?というものです。現状維持の林市長が勝ったので、横浜の中学生は、当面、「お弁当orはまべん」です。

 

本来、カジノの賛成、反対で喧々諤々やれば、横浜をどうしたいのかの、良い議論になるところでした。都市のあり方をどうするの議論は、都市のブランディングの議論ともいえ、国際、文化、観光、研究開発、芸術、娯楽、住宅地など、横浜をどの方向にもっていくか?など、議論があれば良かったのですが、その辺は議論になっていません。

 

カジノは、シンガポールの成功で、経済効果が高いとされていますが、国政で決めきれていないので、まだまだ時間がかかりそうです。林市長からすれば、あえて不利な論点を、論定に設定しなかったというのはあります。

 

今回の記事で、林市長は、カジノのデメリットは説明できるが、メリットが腑に落ちておらず、市民に説明できないとしてます。そのメリットの具体的イメージは文面から明確ではありません。

 

一般には、市の税収アップ、市のホテルや観光産業の活性化、というところがメリットなだと思います。説明しやすいように思いますが、これが説明できないというのは、どういうことなのかと思います。

 

横浜は、東京に非常に近いので、横浜でカジノで楽しんで宿泊は東京(奈良観光はするが、宿泊は京都や大阪という関係)とか、観光は東京、日光、箱根、伊豆になる(横浜中華街は、最大の顧客の中国人の興味を引かない?)などと、確かに思ったほどの経済効果がないのかもしれません。

 

また、日本に一つか二つならまだしも、何か所もできると、共倒れになる可能性もあります(ロースクールの乱立で、司法試験の合格率が下がり、ロースクールの人気が無くなった関係)。特に、カジノがお台場に出来るのなら、今の横浜では、負けそうです。

 

そもそも、日本には、すでに公営ギャンブルや、パチンコ店などが多く、ギャンブル天国で、これ以上のギャンブル需要はないという見方もあります。

 

当初は林市長は賛成派だったと思いますが、住民はだいたい反対派です。林市長は、選挙のためか、ニュートラルとなり、選挙が終わってもニュートラルと言い続けています。

市長の態度は、なんとも分かりにくいのですが、未成熟な議論にはすこし距離を置き、また、新しく芸術劇場という新たな玉を投げて、少しでも実をとろうとするところなど、市長としては相当に大人の対応だと思いました。