Nishinyの商標・ブランド日記

商標・ブランドの情報です。弁理士の西野吉徳のブログです。

COACHの社名変更

Tapestryタペストリー)に

2017年10月13日の朝日新聞に、高級革製品の米国のコーチが、社名をタペストリーに変更するという記事がありました。

www.asahi.com

記事には、次の記載があります。

  • コーチは10月31日付で、社名を「タペストリー」に変えると発表
  • ブランドを多角化
  • ケイト・スペードを24億ドル(約2700億円)で買収
  • ブランド名の「コーチ」はそのまま残す
  • 単一ブランドの専門店から進化し、会社を生まれ変わらせている

 

Forbesに詳しい解説がありました。

jp.reuters.com

LVMH、Kering、Richemontといったヨーロピアン・ラグジュアリーブランド・コングロマリットと比較しながら、今回の判断は、ブランドのポートフォリオを構築する上で正しいとしいう見方を紹介しています。

また、コーチが、次の他の買収を続けようとしていることを示しているとのことです。

ただし、ソーシャルメディアでは、コーチ・タペストリーのニュースには、批判があり、株価は3%近く下落したと紹介しています。

モノブランドの企業体制では、四半期毎の業績要求に対応することは難しいという意見です。

 

コメント

COACHのブランドは残るので、消費者には大きな影響のない話です。投資家との関係、企業運営上のメリットの話だと思います。

 

ブランドと社名が違う会社としては、海外ではGoogle社がAlphabetになったのが有名ですし、日本ではユニクロ・GUのファーストリテイリングが有名でしょうか。

 

ひと昔前は、コーポレートブランド経営やコーポレートブランド戦略ということが言われ、社名とブランド名を一致させて、各ステークホルダーに単一のメッセージを送ることが一番良いという考えが多かったのですが、最近は、それに拘らない会社の方が目立つようになってきた感じです。

 

単一のブランドで勝負した方が良いのは、電機や機械や化学などの業界の話だと思います。コーポレートブランドの信頼感が重要な分野は、これからもコーポレートブランドが重視されると思われます。

 

一方、もともと、ファッション関係や飲食業の業界では、一つの企業が各々のセグメントやマーケットに適したブランドを複数使うのが当たり前であり、単一のコーポレートブランドは、株式市場・投資家、就職など、会社として判断される時以外は、あまり意味がありませんでした。

 

COACHは、欧州のLVMHのようなブランド・コングロマリットを目指し、そうなることは業績安定には寄与するのでしょうが、各ブランドが魅力を保たないと意味がありません。本社としては、各ブランドにどのような便益を提供できるかが問われそうです。
 
新しいデザイナーの投入、ファッションショーや広告宣伝などの派手なところに目が行きますが、一般人材のプール・横展開、経理システムや物流、店舗開発・運営など、案外地道なところが、ブランド・コングロマリットになる一つのメリットだと思います。