インドの最高裁の判決(命令)
2017年10月18日の朝日新聞の特派員メモというコラムです。インドでは最高裁の判決で、映画の上映前に、国家斉唱が必要になっているようです。
コラムの情報は、次のようなものです。
- 上映前、国歌斉唱のために起立を求めるアナウンス
- インド最高裁は昨年11月、愛国主義を醸成するため上映前の国歌演奏と観客の起立を義務づけ
- 国歌が流れる間、スクリーンには国旗
- 直後、観客の男性がヒンディー語で「インドの女神に」と叫ぶと、周囲が応じて「勝利を!」と唱和
- この文言は、モディ首相が演説の最後に使うもの
- インドは多数派ヒンドゥー教徒の文化に基づいた国家であるべきとの考え
- 起立しない観客が暴行される事件あり
- 少数派のイスラム教徒は反対。映画館には「怖くて行けない」と言う人がいる
ということです。
インドの最高裁が、国歌を義務付けたことについては、2016年12月6日の産経新聞の記事がありました。
朝日新聞のコラムと同じような内容ですが、追加情報としては、次がありました。
- これまでインドの映画館は携帯電話の使用や拍手、口笛など自由気ままな場所だっただけに、観客が素直に命令に従うのか不透明
裁判の内容については、CNNの記事がありました。
それには、次のことが書かれていました。
- 裁判は元技術者が原告。何が国歌に対する不敬や乱用に当たるのかを具体的に示すよう求めて裁判を提起
- 国歌が頻繁に侮辱されていると主張。国歌を守るための規範が示される必要があると訴えた
- 判決では「国民は自分が住む国のことを認識しなければならず、国歌に対して敬意を示す義務がある」と判断
- インド内務省の規定では、国歌が斉唱されたり演奏されたりしている時は必ず起立しなければならないとしている
コメント
国民に新たな義務を課す時、日本の感覚では国会の法律で対応ということであり、裁判所が判決や命令で、このような義務を課すというのは、日本の法運用の感覚では違和感があります。
日本では、このような裁判を提起しても、国会の法律で規律すべき事項であるとか、訴えの利益がないとかの理由で、門前払いされると思います。
コモンローの国ですので、裁判所がこういう命令を出せるのかもしれませんが、インドの最高裁は法創造機能が強くあるように思いました。
裁判官も、相当な自信がないと、このような判決を出せないように思います。
また、最高裁の判決なり命令を執行するのは、誰なんでしょうか?映画館には監督官庁がありそうですので、その行政が最高裁判決・命令を熟知して、それに沿った対応を求めるということでしょうか。
ちなみに、インドはモディ政権になり、急激に経済は良くなっていると先日のインド商標法の講演会で聞きました。
モディ首相の清廉潔白さが、各種改革を可能にしているということでした。
清廉潔白さと右傾化は、構造的に近いものがあるのでしょうか?