Nishinyの商標・ブランド日記

商標・ブランドの情報です。弁理士の西野吉徳のブログです。

公認会計士の補習で不正

会計教育研修機構の補修生

2017年11月11日の朝日新聞に、公認会計士に合格し、登録に必要な実務補習を受けている補習生12名が、提出した論文に不正があり、所属監査法人が処分をしたという記事がありました。

digital.asahi.com

  • 会計士試験に合格しても、2年以上の業務補助と3年の実務補習を修了しないと、会計士となれない
  • 実務補習は、認定を受ける「会計教育研修機構」(東京)に通う
  • 実務補習では課題研究として、論文を3年で6回提出して単位を取得
  • 提出した論文に、コピー&ペーストしたり、他の資料や文献を引き写したりの盗用行為あり
  • 提出論文は無効に。所属する監査法人に通知したりするなどの処分
  • 補習生約3千人の中では、今年、講義に出席したように偽る「代返」もあった

 

コメント

弁理士試験と、良くマスコミに出てくる司法試験以外の、他の士業の試験をあまり知らないので、この記事に興味を持ちました。公認会計士は、今は、需給関係が良いのと、新規業務のおかげで、就職状況は非常に良いようです。

 

論文のコピペや代返は、大学生などでよくある話で、驚くほどのことでもありませんが、そのようなことが無いようしないといけないのは、もちろんだと思います。

 

上記朝日新聞によると、公認会計士試験について、

  • 公認会計士は、エンロンの粉飾事件などをきっかけに、2000年代初めに会計士を5万人に増やす目標
  • 2008年のリーマン・ショックで大手監査法人が採用を絞り、合格しても就職できない会計士が続出
  • その結果、志願者が激減し、2007年に4千人を超えた合格者も昨年は約1100人に減少
  • 会計士の数も約3万人にとどまっている

とあります。朝日新聞の記事は、最後に、2006年以降の試験の簡素化が会計士の質の低下を招いているという識者のコメントがありました。

 

ちなみに、平成28年度は出願者数が10,256人。合格者は1,108人でした。合格率は、10.8%です。参考として、弁理士試験の合格率が、7.0%です。

 

また、今回問題になっている実務補修は、実は、終了考査があり、その合格率は、70%程度です。公認会計士試験に合格した人の中で70%ですので、そんなに簡単ではありません。

この試験があるから、論文コピペと代返ぐらい大目にみてよという感覚もわからないではありませんが、駄目でしょうね。

 

ちなみに、この終了考査、日本公認会計士協会が行っているので、ある程度、金融庁から独立性があるようです。

 

www.hp.jicpa.or.jp

  •  修了考査は、実務補習の内容全体について適切な理解がなされているかどうかを確認し、実務的な専門能力と適格性の確認をする。筆記の方法で毎年2日間の日程
  • 平成28年の修了考査の受験願書提出者数は1,785名、受験者数は1,649名、合格者数は1,147名
  • 対受験願書提出者数合格率64.3%、対受験者数合格率69.6%

試験制度の簡素化で、士業の質が変わるというよりは、士業の質は、その業界全体の元気の良さとか、その業界の紀律の高さとか、どの事務所に勤務するか(どんな先生がいて、どんなOJTが受けられるのか、どんな業務が経験できるのか)、といった面が多いように思います。

感覚的には、以前の合格率の低かった弁理士試験の合格者と、今の合格率の高い試験の合格者に基礎的な能力の差はありませんが、差があるとすると、数が多いので、いろんな経験を積むことが減り、そのために伸びが低下する可能性があるということでしょうか。