保有割合が9.93%に
2017年11月29日の日経に、ヤマハがヤマハ発動機の株式を売却するというニュースがありました。
- ヤマハが保有するヤマハ発動機株のうち、2割弱にあたる800万株を売却
- 売却で得た資金は自社株買いに充てる
- 持ち合い株を減らし、資産効率を改善して企業価値を高める
- ヤマハ発動機株に占めるヤマハの保有割合は議決権ベースで12.22%から9.93%に
- 共同でヤマハブランドの価値を高める取り組みや相互の取締役派遣などは継続
- ヤマハ発動機はヤマハのモーターサイクル製造部門が1955年に分離独立して誕生
- ヤマハが大株主として株式を大量に保有
- ヤマハ発動機もヤマハ株を5%強保有
- 資本関係はあったものの、事業上のつながりは薄かった
とあります。
また、2017年11月28日のヤマハのニュースリリースによると、保有方針と売却理由という項目がありました。
- 株式は持続的な成長と中長期的な企業価値の向上に資する場合にのみ保有する方針
- ヤマハ発動機株式会社は、共通の「ヤマハ」ブランドを使用しており、 「合同ブランド委員 会」 、「ヤマハブランド憲章」、 「合同ブランド規程」を設け、様々な取組みを共同で実施
- 株式の保有、取締役の派遣を通じ、双方の持続的成長に向けた取組みを適切にモニタリング
- モニタリング・協力関係により、 「ヤマハ」ブランド価値の維持・向上を図ることが、中長期的な企業価値の向上に資する
- 今後とも協力関係を維持。一方で、資産効率の観点などから保有レベルについては、主要株主(議決権割合が10%以上の株主)を外れるレベルまで保有を引き下げる
とありました。
コメント
何かのブランドの本で、YAMAHAブランドは、潜在能力から言って、日本一のブランドという文章を読んだことがあります。TOYOTA2000GT のエンジンはYAMAHA製ですし、YAMAHAポプコンとか、相当良いイメージがあるのは、確かです。
さて、売上規模は、すでにヤマハ発動機の方が1.5兆円規模で、4000億円規模のヤマハを大きく超えているようです。
先日の講演会で元ヤマハの弁理士さんから、両社のYAMAHAロゴの違いなどを聞いていたので、このニュース、興味を持って読みました。
紫が楽器・音響機器のYAMAHAロゴで、赤がバイクやマリンの発動機のYAMAHAロゴ、また、音叉の長さ違いや、YAMAHAロゴ自体の違いの話も聞きました。
10%を切るということは、ほぼ株式でのコントロールは難しく、ニュースリリースにあるような、「合同ブランド委員 会」 で議論し、「ヤマハブランド憲章」、 「合同ブランド規程」でコントロールしないといけないようですが、大変だなぁと思いました。
J-Plat PatでYAMAHAを検索すると、4類、7類、12類は、ヤマハ発動機が商標権の名義人になっています。その他の分類は、ヤマハが名義人です。
ヤマハが完全に商標権を保有して、ライセンスしているのかと思っていました。
海外も、Global Brand Databaseで見ると、上記の分類は、ヤマハ発動機名義になっているようです。
商標権は、すみ分けているということですね。
ヤマハに権利があり、使用権者が発動機だとすると、ライセンス契約やライセンス登録が必要になり、面倒なのは分かります。
旧財閥系では、戦前は財閥本社があったので、一元管理ができていたのが、戦後の財閥解体で分かれてしまい、日本の商標権の名義は主要各社を変えましたが、海外では財閥本社の業務を引き継いだ商社が名義を持っていると聞いていたですが、今は違ってきているのかもしれません。
権利の名義を一社に集中しておくメリットは、商標権の取得時に引用されないという点です。同意書制度のある国はまだよいのですが、同意書制度がなければ、新商品や新サービスは権利化できないことも出てきます。
経営的には、それにとどまらず、一元管理することで求心力を維持することが可能で、組織のアイデンティティを守ることができ、たぶんこちらが、真の目的です。
商標権で抑えておくと、例え、株式保有比率が50%なくても、コントロールが可能なことが多いためです。
このあたり、緩めの企業グループと、きつめの企業グループがありますが、創業者がいるときはきつめで、だんだん緩くなる傾向があります。また、創業者がおられなくても、理念等の浸透度の高い企業グループは、まとまる傾向にあります。
話は変わりますが、若い人は、ヤマハが昭和62年までは日本楽器製造株式会社(日本楽器)という社名だったことを知らない人が非常に多いので、世代間格差があって、面白い点です。