Nishinyの商標・ブランド日記

商標・ブランドの情報です。弁理士の西野吉徳のブログです。

意匠データをEUで公開

Design Viewに特許庁情報提供

2017年12月6日の日経に、特許庁が工業デザインの意匠権に関して、欧州連合知的財産庁(EUIPO)と連携して、日本の情報をEUIPOのデザインビューに掲載するという記事がありました。

www.nikkei.com

  • 12月からEUIPOが運営する世界最大のデータベース(Design View)で日本の情報を公開
  • 企業やデザイナーにとっては製品化する際、他国の情報と一括で事例を確認できる
  • EUには世界で登録された意匠の検索システム「Design View」がある
  • 世界の54の知財関係庁の1300万件以上のデザインが閲覧可能
  • 企業は製品を投入する国で似たものがないか確認する必要がある
  • このデータベースは、海外の小売企業なども多く閲覧している
  • 日本企業の優れたデザインが多くサイトに出れば、海外企業にアピールする機会
  • 12月以降、様々な機能を日本語で使えるようにする
  • デザインを意匠権として申請する際、国によって提出する図面の開示要件が異なるなど制度面での違いがある
  • 日本、米国、EU、中国、韓国の5大知財庁は今後、主要国での比較調査や統計調査を実施
  • 必要なものは統一するなどして、国際的な意匠権取得の利便性を高める

 コメント

今の事務所では、商標、それも外国商標(内外)だけを担当しているので、なかなか意匠に触れるチャンスがありません。

 

以前の会社では、入社してからしばらくは、商標も意匠も担当しており、AV商品と電化商品という家電を担当していたので件数も多かった記憶があります。

だいたい、午前中は意匠、午後にネーミング系の商標(ペットネーム)、夜にブランド(ハウスマーク)という生活をしていました。

意匠と商標をセットですると、どうしても、期限の優先される意匠を先にやる必要になり、次に、事業部から督促のあるネーミングとなり、最後に重要なブランドを空いた時間にするという事態になりがちです。今は、担当を明確に分けているのだと思います。

仕事はだいぶ荒っぽかったですが、数だけは相当な件数を処理したと思いますので、意匠の類否判断の感覚は残っています。

意匠の意見書や審判請求や外国出願など一通りやりましたし、意匠調査もやりました。あれぐらいやったのだから、素直な感覚として、意匠もやりたいなと思います。

 

さて、この話は、外国商標実務で見ているTM Viewと同じようなDesign Viewというシステムを、EUIPOが作っていて、それに日本もデータを供給するということです。

この程度のシステム、日本が先頭に立ってやれば良いと思いますが、日本の特許庁は電子出願などでは先行しましたが、Webには強くないのかもしれません。今となっては、インドなどの方が、進んでいるように思います。ガラパゴスです。

 

EUIPO(欧州連合知的財産庁)という立派な名前ですが、特許はEUIPOでは取り扱わず、EU傘下ではなく、別の条約で出来た欧州特許庁が担当しているという構成です。

 

商標の方では、EUIPOがTM Viewを、世界知的所有権機関WIPO)がGlobal Brand Databaseを公開して競っていますが、意匠でも、WIPOにGlobal Design Databaseというものがあるようです。

 

WIPOはマドプロやハーグ協定で潤っており、EUIPOはEUTMや登録共同体意匠(registered Community design、RCD)で潤っているので、このような似たデータベース事業を双方でやっていると聞いたことがあります。

二つが競うことで、結果として良いものができるのであれば、ユーザーとしては良いことだと思います。

 

先日、特許事務所のような特許実務をする企業の商標の責任者と話をしていたときに、企業や特許事務所が今やっているデータ入力のような仕事は、将来無くなるだろうと言っておられました。理由は、各国がデータをEUIPOやWIPOに預け、企業や特許事務所などは、そのDBを使える状態になるのでは?ということです。

 

企業で、商標管理していて、一番大変なのはデータ管理で、だんだん特許事務所からデータをもらうようになり、今はオンラインで企業のシステムに入れることが多くなっていますが、それでも特許事務所には入力作業が残っています。

EUIPOやWIPOのDBと直結して、その作業が無くなるなら、入力ミスのようなことも、減るはずです。

 

だいぶ前にある大会社の商標の責任者が、国内商標のDBを一切作っていないと豪語されていたことを思い出しました。その方は、年に一度、自社の名称でパトリス(当時)で検索して、全件打ち出して、それを順番にならべて、今年の更新リストにすると言っていました。簡単な方法ですが、間違いのない方法だと感心した覚えがあります。事業場への請求ができないとか、どの事業場の依頼かわからないとか、突っ込みどころはありますが、公的なデータベースを基本にするという点は、発想が似ています。

 

知財の醍醐味は、催告であり、侵害訴訟であり、模倣品対策であり、異議申立であり、無効審判であり、係争にこそありますので、DB管理のようなものから早く解放されて、本質的な業務ができるようになれば良いと思います。