JA全農兵庫直営レストランの問題
2017年12月27日のYahooニュースで、JA全農兵庫の直営レストラン「神戸プレジール本店」が、神戸ビーフと偽って但馬牛を提供していた問題を知りました。神戸新聞NEXTの記事です。
- 調査委員会は、偽装は2011年10月から今年10月15日まで行われていたとする報告書を発表
- 「神戸ビーフフィレ」と偽って提供された「但馬牛フィレ」は推計で約950キロ、約9500食分に相当
- 運営を料理長に任せきりで調理現場がブラックボックス化していた
- 本部による管理体制や内部通報制度などに問題があった
- 会見でJA全農兵庫の本部長はお客様と生産者に謝罪。神戸牛、但馬牛のブランドを傷つけたことを深く謝罪
この問題は2017年10月に発覚して、今回は、調査委員会の報告書が出たというニュースのようです。
但馬牛を神戸牛と偽る 神戸のJA全農レストラン :日本経済新聞
10月のニュースですが、内部通報で発覚したとあり、客への代金の返金と当面休業ということが書かれています。
コメント
地理的表示(GI)の問題です。この件、10月の段階では日経では関西版のみのニュースだったようです。12月のニュースは、全国ニュースです。
まず、Wikipediaによると、神戸ビーフと但馬ビーフの違いは、次のように説明されています。
兵庫県産(但馬牛)のうち、歩留等級が「A」または「B」等級ならば「但馬牛」「但馬ビーフ」「TAJIMA BEEF」と呼称される牛肉となる。
このうち、以下の全ての基準を満たした牛肉は、「神戸ビーフ」「神戸肉」(以上は正式名称)「神戸牛(こうべうし)」「神戸牛(こうべぎゅう)」「KOBE BEEF」との呼称を用いることもできる。
- メスでは未桂経産牛、オスでは去勢牛
- 脂肪交雑の牛脂肪交雑基準(BMS)値No.6以上
- 枝肉重量がメスでは230〜470kg、オスでは260〜470kg
- 瑕疵の表示がある枝肉は、神戸肉流通推進協議会の委嘱会員の判定に依存
「神戸ビーフ」の基準を満たしている牛肉は、「神戸ビーフ」と「但馬牛」のいずれかの銘柄名を任意に選んで出荷することが可能である。
但馬牛の中で、一定の基準を満たしたものが神戸牛のようです。と言っても、肉質の良い牛肉でも、神戸ビーフにせずに、但馬牛で流通させているもののあるようです。
このお店のWebサイトは、現在、閉鎖されていますが、食べログにメニュー等がありました。
価格は、一番安いコースで比較して、ランチでは神戸ビーフ8,000円で但馬牛5,000円、ディナーでも神戸ビーフ11,000円で但馬牛8,000円と、双方とも3,000円の差があるようです。
食べログでは、3.68という高い評価を得ています。
調査委員会が指摘している、本部の管理体制や内部通報制度に問題があったのだと思いますが、地理的表示保護制度で恩恵を受けていると言っても良いJAが、その直営レストランで問題を起こしてしまい、自分で自分の首を絞めた結果となっています。
GIの対象の商品でも、パッケージにでも入っていたり、焼き印が目の前で確認できたりすると、まだ良いですが、牛肉の場合は、店舗側の表示を信頼するしかなく、そのためたびたび牛肉偽装の問題は生じます。
ちなみに、神戸ビーフも但馬牛も、地理的表示保護制度で登録されています。
地理的表示保護制度は、生産団体、輸入業者を対象とする規制ですので、今回のレストランは、景表法マターのように思います。
今回は、JA全農兵庫直営のレストランだったので、ニュースになりましたが、通常のレストランはどうなっているでしょうか?牛肉の偽装は、レストランの従業員しか分かりません。そもそも、神戸ビーフと但馬牛を見分けることも素人には難しく、さらに、調理された後では判別は全く困難ではないかと思います。
牛肉偽装の問題は、トレーサビリティや、定期的な第三者機関の監査、抜き打ち監査、一般の通報制度のようなものを組み合わせていく方向しかないと思いますが、コストや権限の問題で壁にぶち当たりそうです。
役所も農林水産省や消費者庁や特許庁(神戸ビーフや但馬牛は、地域団体商標にもなっています)に分かれていますし、関連団体も色々ありそうなので、一筋縄にはいかない問題のような気がします。
神戸ビーフも但馬牛も、現時点、ブランド価値が高いですが、このブランド価値を今後とも維持・向上していこうとすると、より組織的、体系的に制度設計して、運用していかないといけないように思いました。