リカーリング(継続課金)
2018年1月5日の日経の、ソニーの最高益更新の記事で、この言葉が出ていました。
記事によると、ソニーは、今期、20年ぶりの営業最高益(6300億円)が射程に入ったとあります。牽引役は、2兆円の売上高のゲーム事業であり、その5割がネットワーク事業ということです。
ネットワーク事業とは、プレイステーション4のゲームのダウンロードを手掛けており、特に、年5,000円のPSプラスに加入すると、複数人でオンラインゲームができるようです。この会員数が、3000万人規模になりつつあるということです。
これまでは、ゲーム機本体などの最終製品の販売が必要な事業構造だったのが、ゲームのオンライン会員のような継続課金にシフトしており、このようなビジネス群をリカーリング(recurring)と呼ぶようです。
ゲーム、音楽、復活した犬型ロボットaibo(アイボ)が、リカーリングビジネスということです。
そして、ソニーは、売上はリカーリングビジネスで伸ばす一方、工場は20年前の3分の1にして外注化を進め、有形固定資産回転率が下がり、稼ぐ力が高まったとあります。
コメント
リカーリングで検索すると、次の記事がありました。
この記事の著者によると、リカーリングビジネスには、3つほどの種類があるようです。
一つ目は、音楽でファンが継続的に音楽CDを購入してくれるようなもの。
二つ目は、ネット接続事業者のように、毎月加入料を支払うようなもの。
三つ目は、家電の消耗品や付属品を継続的に買い続けさせるタイプのもの。そして、3つめが、インクジェットプリンターが該当し、高性能のプリンタを安い価格で販売し、インクカートリッジを高く販売する方法とありました。
三つ目のプリンターカートリッジの事例などは、「またお金を取るの?」とファンを逃してしまう可能性も秘めるとあります。確かに、リカーリングには、その可能性もあります。
しかし、電機業界でも、例えば、エレベータ・エスカレータなどの事業は、メンテナンスがあり、継続課金が見込める企業は好調です。自動車も車検制度があり、自動車業界を守っている面があります。
さて、問題は、特許事務所の業界に、リカーリングがあるかどうかです。
顧問料などは、リカーリングです。しかし、今は、非常に少ないと思います。
また、商標の更新などは、リカーリング・ビジネスだったと思います。ただ、その部分は、特許事務所以外の知財会社が強くなっています。
もともと、特許事務所は、出願書類を、一つ完成させていくらというビジネスモデルですので、基本的に、リカーリングではありません。労働集約型で、人海戦術です。歴史で習った、工場制手工業です。多少は、法制度の知識、TIPSの塊など、知識産業の面もありますが、平均的に業界の人は皆が持っているノウハウですので大差はありません。
最近は、弁理士会などはコンサル型業務を進めていますが、弁理士に期待されるコンサル結果は、知財を用いたリカーリングの創出です。しかし、知財リカーリングを指導すべき弁理士自身が、継続課金できていないとすれば、まずは、自らの業務の再設計から始めないといけないように思います。
欧州連合商標(EUTM)などは、特許庁は方式審査と識別性の審査はしますが、抵触性の審査は権利者同士の話し合いを第一としますので、異議申立では、弁理士が活躍しています。
マッチポンプになっては駄目ですが、異議申立のチェックも重要です。外国商標の実務を担当して、日本のように審査官に責任の全てを持ってもらう他人任せの制度、運用より、良いと思っています。異議申立が活性化していますし、フランスやドイツの商標調査の質も、インターネットを駆使した合理的なものになっており、昔に比べてだいぶ良くなっているように思います。昔の無審査主義の、同じ商標の権利が沢山あり、誰が強いのか不明という悪い点はなくなってきています。
批判もあるとは思いますが、EUTMのような制度の構築などは、結果としては、良いリカーリングではないかと思いました。