Nishinyの商標・ブランド日記

商標・ブランドの情報です。弁理士の西野吉徳のブログです。

閃きの番人

今回は自転車のチャイルドシートの事件

2018年1月31日から、弁理士会のWebサイトで、広報活動の一環として掲載している「閃きの番人」の第2作目の後編が掲載されています。

http://www.jpaa.or.jp/comic/

今回は、自転車のチャイルドシートの特許に絡んで、元弁理士が発明を横取りしてしまうという内容です。漫画は面白かったですので、弁理士会のサイトから読んでください。

 

今回の話題は、過去に不正があり、資格を取り消された元弁理士が、弁理士類似の出願などの行為をしており、うっかりと元弁理士に引っかかった女性からの依頼案件です。

 

弁理士がネットで営業しているという設定で、最近のWebサイトで顧客を勧誘するタイプの特許事務所への批判とも読み取れます。

ただ、一般企業に勤務して、宣伝の近くにいた立場から考えると、従来の士業(侍業)が、広告をあまり使ってこなかったことの方が異常ともいえます。ムラ社会すぎます。

 

広告がない場合に、企業が、弁理士なり士業とお付き合いを開始する場合は、業界での評判、税理士さんなりの人からの紹介、直接の営業活動、講演会活動、論文等でレベルの高さの確認、などとなります。顧客は、これらで、直接にレベルなどを確認して、依頼するかどうかを決定します。

たぶん、弁理士が一般的な広告ができなかったときは(事務所名と所属弁理士名を列記する程度の広告はありました)、お客さんは知り合いから紹介してもらっていたのだとと思います。一方、紹介がありますので、元弁理士の非弁行為に引っかかる等の問題は、比較的少なかったと思います。

 

しかし、広告がないことは、特許が一般に広がらない大きな理由でもあります。WebサイトやSNSも広告と考えてですが、これからの時代、広告しない業界などありえません。

 

一方、広告は、どんな内容でもOKというものではありません。電機には電機の、薬品には薬品のルールがあり、ルールを逸脱した広告は消費者や顧客に誤認混同を起こさせますので、業界規制の対象になります。

 

日本の広告規制は、基本は、業界団体ごとに公正取引協議会を設置して自治的に解決する方式ですので、知的財産業務の公正取引協議会を作って、消費者なり顧客企業に対して誤認を与える広告を、ルールを作ったりして自主規制するのが良いのですが、一般消費者が被害に遭わなかったのと、弁理士会というなんでも対応する専門組織があるために、公正取引協議会がありません。この状態は、法律事務所も同じで、このため、アディーレ法律事務所ができてしまったとも思います。

 

今、問題になっているのは、商標業務を格安で請け負い、顧客へのサービスが十分でないことです。例えば、パテントに弁理士会の吉田副会長もその点を言っています。

http://system.jpaa.or.jp/.../jpaapatent201607_001-002.pdf

書いてある金額以外にも支払いが必要があるとして請求されたとか、ちょっと難しい事態になったときに対応できないので他の特許事務所にお願いしてくれと言われたとかです。

 

弁理士業界には、今まで、宣伝をしてこなかったので宣伝のプロがいません。これからの時代、宣伝や広報の担当者のいない事務所は生き残れませんし、もっと本格的に広告すべきです。自分は専門家と言いながら、広告をしないのは、本末転倒と思います。良い商品を作ったら、知ってもらう必要があるのです。

まずは、自分は何が得意であり、過去どのような経験があり、どういうポリシーで業務をしているかなどは、全弁理士が、積極的に出すべきです。(弁理士会のWebサイトに紹介がありますが、非常に良いことだと思ったのですが、利用が低調なようです。)

そして、事務所はどんなサービスに特徴があるのかを積極的に出すべきです。

仮に、今、問題となっている事務所ではない事務所が、見やすく、しっかりした内容のWebサイトを作成して、SEO対策をやって、(検索連動)広告もし、お客さんの声の紹介をすれば、今、問題になっている事務所は価格だけであることが明確になり、問題は解決する可能性があります。それをやらずに、文句を言ってもはじまりません。もう、ルビコンは渡ってしまったのです。

 

提案ですが、弁理士会に宣伝委員会を設置してはどうかと思います。

まずは、特許事務所の担当者の宣伝広報の能力をアップすることが急務です。これが一番の本筋です。いくら広報センターが、パテントを出し、漫画を作って頑張っても、たかが知れています。やはり各特許事務所が、積極的に知財をPRすべきです。そして、事務所経営者は、その人材を評価すべきです。

次に、別の委員会でやっているかもしれませんが、一般消費者からの苦情を集め、それを基にした問題事例集を作ることが必要と思います。そして、弁理士会のルールは、電機や薬品のルールと比べて、十分とは言えないと思いますので、景表法の専門家も入れて(昔の公取、今の消費者庁)、ルール案を作ることが必要です。

最後は、強い権限です。違反者には、アディーレに近い処分が必要になると思います。弁理士会は、裁判覚悟でやる必要があります。

 

ちなみに、広報、広告、宣伝は、違う意味と理解しています。

広報:メディアに対価を支払ない情報(受)発信

広告:メディアに対価を支払って行う情報発信

宣伝:自らを知ってもらおうとする活動一般

 

 

nishiny.hatenablog.com