印紙代がいらない?
2018年2月12日の日経に、契約書を書面ではなく、ネット上で締結するクラウド契約の最近の動きの説明記事がありました。www.nikkei.com
- 電子署名したPDFファイルなどをクラウドにアップロードし、相手先に通知
- 相手先が通知されたアドレスにアクセスし、電子署名
- ファイルはクラウド上で保管
- 法令上は幅広い分野で電子化が可能
- 日本では正式文書は印鑑が必要だとする「ハンコ文化」が根強い
- 法務部門の効率化
- 弁護士ドットコムの「クラウドサイン」
- 導入実績は無料での利用も含めて1万6000事業者、累計15万件の契約
- ネット系、不動産、金融、人材サービスなど業種の広がり
- 法律事務所が依頼人との契約などに利用するケースも多い
- 契約の期間短縮、印紙代や倉庫代などの経費削減の効果
- メルカリは、雇用契約書を電子化。70倍の効率
- 海外では米ドキュサインが最大手。400社が有料で導入
- グローバル対応に強みを持ち、外国企業との契約での利用
- 民法では電子契約も有効。例外は、特定商取引法
- 「書面で交付しなければならない」と定められた訪問販売の契約書など
コメント
記事で紹介されていた、弁護士ドットコムのクラウドサインというサービスのWebサイトを見てみました。導入企業が相次いでいるようです。記事にあったメルカリもそうですが、野村証券、ネスレなどの大手や、税理士法人などの固めの職業でも導入しているようです。
いわゆる契約書というものもあれば、取引先にCSRの方針をみてもらい、同意してもらうというものもありました。
機密管理は、紙と同じ程度だとおもいます。紙の契約も、PDFにして、emailでやりとりしていますので、大差ありません。
契約の有効性には、特に問題なさそうです。
商標の業務で、繊維の会社が、繊維を買っていただいたお客様に完成品のシャツなどのタグにつける「●●製の▲▲糸」のようなものを使用許可する時の契約を年間1万件以上もやっており、アルバイト7~8名で担当している、というようなことを聞いたことがありますが、これなどは、クラウド契約に向いています。確かに、大量の業務量がありそうです。
会社の規模が小さいときは、法務部に契約を一元可能ですが、規模が大きくなると法務部で管理できなくなり、契約書の保管を事業部門に任せるようになります。事業部門では経理が契約書の管理をする場合が多いと思いますが、営業の担当者の机の中に契約書があるということも出てきます。会社の将来を決定するような重要な契約書ではないかもしれませんが、管理としては、良くありません。
クラウド契約が広がると、どこに行ったか分からないということは無くなるように思います。
一点、気になったのは、印紙税の話ですが、クラウドサインのWebサイトに、次のように説明がありました。
印紙税法第2条の別表第1には、印紙税の対象文書として20項目が記載されています。しかしながら、電子文書は、この20項目に含まれていません。そして課税文書は「紙の原本」と定義されていますので、契約書の電子データだけでなく、電子データのコピー(写し)も原本でないために印紙税はかかりません。国税庁は「電磁的記録」により契約締結した場合にいは印紙税が発生しない旨を明確化しており、E-mail、FAX等での契約締結に関しても印紙税は発生しないものとしています。
電子文書は、印紙を貼るところもないですので、現状納付の方法もありませんので、納得です。この点は、大きなメリットで、まずは、定型的な契約は書面からクラウドにシフトしそうです。
もう一つの海外のドキュサインのWebサイトです。
パソナが人材派遣で使っているようです。
気になるのは、これらの運営会社がいつまでも残ってくれているかです。
数十年先にも見返す意味のある契約書はあまり多くはないと思いますが、極まれにお宝契約があります。それらまで、クラウドに預けて良いのかなぁという感想です。