Nishinyの商標・ブランド日記

商標・ブランドの情報です。弁理士の西野吉徳のブログです。

G20 アマゾン課税協議

国境を超える電子商取引所得税

2018年2月24日の日経に、G20でアマゾンなどの電子商取引の課税強化を打ち出す旨の記事が出ていました。www.nikkei.com

記事は、大略、次のような内容です。

  • G20はアマゾンなどの電子商取引業者への課税強化案を検討
  • 法人税については、OECDの租税条約で、グローバル企業が進出先の国に支店や工場などの恒久的施設(Permanent Establishment)を持たない場合はかけられない
  • たとえば、アマゾンの電子書籍を日本の消費者がネットで購入しても、日本はアマゾンの利益への課税権がなく、法人税は米国に入る
  • 米企業のサーバーから配信した映画・ドラマ、音楽ソフト、アプリといったものの法人税も同じ
  • モノについては、OECDのルール変更で、ネット企業の「大型の物流倉庫」があれば消費地国が課税できるようルール変更済み。日本も2019年1月から適用
  • しかし、モノの動きを伴わず、ネット上で完結する音楽や映画の売買は相変わらず所得課税の抜け穴
  • なお、消費税については、日本では海外から配信される音楽ソフトなどに2015年10月から課税
  • 有力視されている案は、欧州(ドイツ、フランス)が主張する案
  • 同じサービスを提供しても海外企業と国内企業で税負担が異なるのは不公平と考え、内外企業の租税負担のバランスをとるため、海外企業に限って「平衡税」を課す。2019年にも、国ごとの売上高に一定の割合で課税する案
  • さらに、早ければ2020年にも、「恒久的施設」の概念をあらため、モノだけでなく、実際にネット通販を展開している国でのデータ収集量なども基準に加える案
  • EUは一部を除き平衡税を支持。中国やインドなども税収が増える可能性が高く、強くは反対しないのでは
  • 意見集約が不調に終わっても、各国に推奨される事実上の基準となる可能性あり
  • 国や地域で課税ルールが異なる可能性もあり、ネット企業は立地戦略やサービス展開などのグローバル戦略の練り直しを迫られる

コメント

2000年頃に電子商取引が盛んに議論されていたように思います。電子商取引のあるべき姿はどうあるべきかなどが議論されていました。税金の話もあったように思います。

当時の議論では、勃興しつつある電子商取引を抑えるようなことは避けようという意見が多かったように思います。

 

ネットだけで完結するサービスの場合、役務の提供が米国で行われたと考えるか、日本で行われたと考えるのかの選択肢があります(双方で行われたという折衷説もありえます)。

 

記事にあったように、2015年に消費税については、役務の提供が、従来の米国で行われたという考え方を変更し、日本で行われたとなっているようです。

www.mof.go.jp

 

この点、商標の考え方でいえば、ある電子商取引用の商標(例えば、iTunes)を、サーバーを設置している米国と、日本語で日本の消費者相手に事業展開をしている日本と、どちらで権利を取るべきか?となれば、普通は、日本となります。商標では当たり前のことが、税務ではなかなか実現しませんでした。

 

たぶん、国税当局は、国外の事業者に、いかにして税金を支払ってもらうか、苦心していたのだと思います。上の財務省のWebサイトによると、事業向け取引の場合は、通常はサービスの提供者が消費税を支払うのを、サービスの受け手が代わりに支払うリバースチャージ方式と、個人向けの場合は、海外の事業者が国税庁に申告するとあります。そして、日本に事務所等を有しない国外の納税義務者は、国内に書類送達等の宛先となる居住者(納税管理人)を置くこととあります。

 

今回のニュースは、消費税が一段落したので、次の法人税ということですが、外形標準課税ですし、日経の記事で説明があったのですが、売上ではなく利益に課すという法人税の原則に合致しているのか?とか、国際的な二重課税の可能性とか、WTOのルール違反とか、突っ込みどころが沢山ありそうです。

 

米国のIT企業(今回はアマゾンとアップル)は非常に儲けているので、それを狙いうちにした感じはあります。欧州の米国との交渉の玉の一つなのだと思いました。今回の法人税はドイツとフランスですが、電気自動車へのシフトなどはイギリスとフランスが提唱国です。(欧州のGI(地理的表示)には、アメリカや中南米は無視していますが、日本は巻き込まれてしまいました。)

 

欧州は、外交力や知恵のある国が多いので、自国のために、色々な知恵を絞って有利な制度を作って、合従連衡して、制度を押し込んでくるという感じです。

 

日本も、2000年当時に戻れるなら、素直に、電子商取引のあるべき姿など、流暢に考えている場合ではなかったのかもしれません。