Nishinyの商標・ブランド日記

商標・ブランドの情報です。弁理士の西野吉徳のブログです。

魚沼産コシヒカリ

食味ランキングで特A陥落

2018年3月10日の日経に、魚沼産コシヒカリが、コメの食味ランキングで、最高位「特A」を逃したという記事がありました。

www.nikkei.com

  • コメの食味ランキングで魚沼産コシヒカリが最高位「特A」を逃した
  • 前年まで28年連続で地位を守ってきた唯一の銘柄。全国のお手本
  • 陥落したままでは激化する地域間競争で勝ち残れない
  • 「どこのサンプルを使ったか公表していない」
  • 「品質が落ちたとは思えないのに理由も非開示なのか」
  • 「魚沼地域」は広い。東京都の面積の約1.3倍
  • 場所によって土壌や気象は異なり、「一緒くたに評価されても」
  • 「魚沼産」はコメの中では金看板
  • スーパーでは「特Aの魚沼産コシヒカリ」とPOPを掲げる例

その他、記事では、ブランド再興への対応などが書かれています。

 

コメント

ランキングは、日本穀物検定協会が行っているとありました。

食味試験|日本穀物検定協会

同協会のWebサイトによると、次のようにあります。

米の食味ランキングは、炊飯した白飯を試食して評価する食味官能試験に基づき、昭和46年産米から毎年全国規模の産地品種について実施しています。
食味試験のランクは、複数産地のコシヒカリブレンド米を基準米とし、これと試験対象産地品種を比較しておおむね同等のものを「A’」、基準米よりも特に良好なものを「特A」、良好なものを「A」、やや劣るものを「B」、劣るものを「B’」として評価を行い、この結果を毎年食味ランキングとして取りまとめ、発表しています。

平成29年の試験の実施概要を見ると、炊飯器はPanasonicのIH SR-Hを使用とあります。検索しましたが、特定はできなかったので、古い機種でしょうか?

食味試験は、当協会において選抜訓練した専門の評価員である食味 評価エキスパートパネル20名により、白飯の「外観・香り・味・粘 り・硬さ・総合評価」の6項目について、複数産地コシヒカリのブレ ンド米を基準米とし、これと試験対象産地品種のものを比較評価する 相対法により行いました。 また、エキスパートパネル20名は、予め、食味の順番による評価 の偏りをなくすため、1グループ3~4名の6グループに編成し、グ ループ別に試食の順序を変えて行いました。

20名の専門家による評価とあります。20名というのが、十分なのか少ないのかは分かりませんが、専門家の評価ですので、尊重はしなければならないのかと思います。

食味ランキング区分の仕方は、食味の総合評価結果に基づき、基準 米よりも特に良好なものを「特A」、良好なものを「A」、おおむね 同等のものを「A'」、やや劣るものを「B」、劣るものを「B'」に ランク付けしました。

 とありますが、BやB'のものはランキングには出ていませんでした。そもそも、そのような品種は、評価の対象外なのだと思います。

 

ランキングを見ていて、知らない品種が多いなと思いました。

特Aを3年連続で取得している品種は次です。

複数産地がコシヒカリを作っているので、コシヒカリが断然多いようです。このランキングは、地域と品種で整理されていますが、地域団体商標やGIとの関係での整理ではありません。

地域と品種だけでは、農協がよほど頑張らないとブランドのコントロールは難しいと思います。ブランドを作るなら、権利義務が明確になり、規約や契約を作りやすい商標を活用してはどうかと思います。上記の銘柄でも、商標権を取得しているものは、ちらほらです。

日本穀物検定協会のサイトからは、景表法の紹介がありました。

確かに、産地偽装は、景表法などに違反するのでしょうが、偽装の対策の話であり、ブランド作りの話でありません。商標は、これからブランドを作るときに役立つように思います。

 

一方、既存の品種で、既存の地域でいう、魚沼産コシヒカリのような場合は、GIが向いていると思います。しかし、お米は、GIでは登録されていないようです。

登録産品一覧:農林水産省

GIは、名声、評判に近いので、既存ブランドのブランド維持に活用できそうですが、今回の日本穀物検定協会のランキングのような、評価の体系が別にあると、GIにシフトするのはためらわれるかもしれません。

 

魚沼産は、28年連続で特Aを守ってきたというのは、価値があると思います。

また、お米の場合、工業製品と異なり、どの地区のどの農家のお米を検査するかで、評価はだいぶ変わると思いますので、地域全体で、何を検査されても、評価が高くなるような取り組みが必要だと思いました。

 

ランキングが落ちたとしても、実際のブランド価値は簡単には落ちません。今回のランキングは、意図はないとしても、お米のブランド価値を、GIや地域団体商標にシフトさせるものになるように思います。