中国の商標登録出願にかかる中間処理
2018年の2月号に出ていた、岩井智子弁理士の知財管理誌の上記表題の論説を読みました。
抄録には、中国の現行商標法は、2014年5月1日施行で、3年以上が経過しており、2017年の1月には「審査基準及び審理基準」が公告され、2017年3月より最高人民法院が「商標権の付与、権利確認にかかる行政案件の若干の問題に関する規定」という司法解釈が施行されて、ある程度、新法下の規則性が見てて来たため、日本企業の直面する点に焦点をあてて、対策案を述べるとあります。
タイトルからすると、中間処理だけに焦点を当てたものかと思いましたが、出願段階の説明も若干あります。
そして、拒絶を受ける代表的な根拠条文ごとに解説があり、対策としての分割出願や審判請求、審決取消訴訟の説明があり、特に、不使用取消や同意書については、ペーを割いて説明がされているという構成です。
異議申立やエンフォースメントは、この論説の対象外のようです。
詳細は、本論説をご確認いただく必要がありますが、個人的に、面白いと思った点を、項目だけですが、箇条書きにしておきます。
- 中国の出願では、法人名等に中国語翻訳が必要
- 2015年から、行政訴訟の代理人は弁護士のみである点に注意
- 国名などは、禁止用語。日本企業が「日本・・株式会社」を出願するときは、商標と出願人名義を一致させ、日本で既に登録であることを主張しつつ、審判等において反論する
- 文字商標の類似時は、外観に差を設け再出願する方法も検討に値する
- 分割出願は登録可能な方が枝番Aとなり先に公告され、原出願は拒絶査定不服審判に継続する
- 精神拒絶はない
- マドプロ経由の中国出願は、国内では公告はなく、WIPOの国際公報の発行日の翌日から3カ月以内に異議申立可能
- マドプロ経由の場合、暫定拒絶理由通知書の受領から30日に審判請求可能
- 知財法院の受理件数は、年間1万件以上(その内、商標が6000件近く)
- 中国は二審制(一定の条件下で、最高人民法院へ)
- 不使用取消は、商標局への請求は年間4万件(審判継続案件は5000件)
- 多くは答弁されず、自動的に取り消される
- 不使用取消は、挙証責任は、被請求人側
- 不使用取消は、当事者対立構造ではなく、答弁書は請求人に送られない
- 結論に不服なら評審委員会に不服審判を請求する
- 最近は同一性の判断はゆるやか
- 同意書も頻繁に用いられる
- 積極説(当事者の意向を尊重)と消極説(需要者保護をみる)がある。多くの裁判例は積極説
- 旧名称や旧住所が理由で、自社の登録で拒絶されることもある
- 異議申立の三ヶ月の証拠補充は、日本の理由補充とは違う。はじめに根拠と理由は必要。
- 前後左右上下の原則
この1年、中国の調査・出願や中間処理、異議申立を比較的沢山対応しましたので、関心をもって、読むことができました。
特に、不使用取消が、年間4万件も請求されているのは、非常に多いと思います。積極的に不使用取消は活用すべきだなと思いました。
中国の場合、中国の法律事務所などが、積極的に日本でも講演活動をされており、その講演を聞く機会は多いのですが、日本企業の立場で説明しているものは多くないように思います。
本論説は、中間処理に焦点を当てたものですが、調査出願、異議申立、侵害訴訟などについても、同じような論説があれば助かるなと思いました。