Nishinyの商標・ブランド日記

商標・ブランドの情報です。弁理士の西野吉徳のブログです。

ソフトバンクのブランドライセンス

どう考えれば良いのだろうか?

2018年3月23日のソフトバンクグループ株式会社のニュースリリースによると、ソフトバンクグループが子会社のソフトバンク株式会社にブランドをライセンスすることが発表されていました。

www.softbank.jp

リリースを一部引用します。

SBGは、保有する「ソフトバンク」ブランドに係る商標権の一部かつ一定の事業分野において、①SBに専用使用権および通常使用権を設定し、②SBにその子会社に対する再許諾権を付与します。

 

当該権利の有効期間は原則無期限です。

SBGは当該権利の使用許諾の対価として、2018年3月31日までに3,500億円を一括で受領予定です。

なお、SBG連結決算への影響は軽微です。

このような内容です。

 

コメント

企業グループの会社といっても、基本は別会社ですので、ブランドを使用するような場合は、本来は契約をして、第三者取引と同等の対価を取らないと、贈与をしたということになります。

しかしながら、現実にはグループ内でブランドライセンスをしない会社も、まだまだ多いと思います。例えば、全ての商品は親会社を経由している販売しているというようなケースでは、親会社も子会社のブランド使用のメリットを受けることになり、贈与にならなくなるようです。

 

SBGが「SOFTBANK」商標の商標権の所有者だとすると、どのような構成であったのかは分かりませんが、これまでも、SBGとSBの間にはブランドライセンスの何某かの契約がありそうです。例えば、ランニングロイヤルティの支払いタイプだったのではないかと推測します。

 

SBは、これまでSBGの99%子会社(100%ではないようです)であったところ、現在、ソフトバンクの上場が準備されているようです。この上場を機会に、より明確なブランドライセンス契約を結ぼうというのは理解できます。

 

今回のリリースで、注目したのは、①原則無期限ということと、②対価を一括で3500億円という点です。

 

どのような相手先であっても、契約には期限は設けるべきというのが、法務の常識です。上場したとしても子会社であり、利益相反になることもないので、永久としたのでしょうが、珍しいと思います。

もう一つ、対価が非常に高額です。20年のランニングと考えると、1年あたり175億円で、驚くほどの金額にはなりませんが、まとまると巨額です。

ランニングと今回の一時金を比較すると、例えば、今後、ますます「SOFTBANK」の商標権の価値が上がるようなことがあれば、SBとしては儲けになり、SBGとしては損をしたということになります。反対に、「SOFTBANK」の商標権の価値が下がるようなことがあれば、反対になります。

 

企業の規模、事業内容、収益率、ブランドの価値、その他、色々と変動要因もあるので、10年に一度ぐらいは見直して、ランニングにしておくというのが、素直な運用です。

 

グループ内の資本の移し替えで、儲かっている、また、資金調達可能なSBから、これから戦略投資資金が必要なSBGに対して、ブランドライセンスというスキームを使って、必要な資金を移動するという感じがします。

 

SBGですので、税務問題などは当然にクリアーした上で、この方法を選択したのだと思いますが、あまり聞いたことがない方法です。ある意味、部分を限定した、譲渡に近いのかと思いました。