Nishinyの商標・ブランド日記

商標・ブランドの情報です。弁理士の西野吉徳のブログです。

特許庁ステータスレポート2018

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2018年3月29日付で、特許庁ステータスレポート2018が出ました。WebサイトからPDFがダウンロードできますし、冊子も無償配布しているようです。特許庁または知財支援総合窓口で入手できます。

www.jpo.go.jp

日英が対訳になっており、海外の弁護士・弁理士が来た時に、日本の状況を説明したりするときに使えそうな内容です。

日本の出願や登録、審判や異議申立の統計、海外のそれらなどから構成されています。

 

2017年の特許出願は、31万8479件で、この数年横ばいです(通常の日本出願が25万5949件+PCT経由で日本に入ってくる国際特許出願が6万2530件)。

内訳として、通常の日本出願は更に減少し、反対にPCTで日本を指定している国際特許出願が増加しています。

 

日本は工業製品の生産国から、消費地に変容してきていますので、一つのトレンドではないかと思います。世界のトレンドとしては、特許は312万8000件と、リーマンショック後、安定的に増えているので、日本の落ち込みとは正反対です。

特許では、外→内をしないと、生き残れない時代になりそうです。特に、中国からの外内を如何に取り組むかが、これからの日本の特許事務所の戦略になると思います。

 

出願件数の1位は三菱電機、2位がキヤノン、3位がトヨタ自動車パナソニックIPマネジメント、本田技研工業と続きます。

日本からのPCT出願は、4万7425件と9年前の2008年と比較すると、7割アップというところです。

 

商標は、合計19万939件(通常の日本出願が17万3611件+マドプロ経由が1万7328件)です。だいたい、平均10万件だったのが、2015年、2016年、2017年と、非常に伸びています。

アベノミクスで経済が好調なことを反映しているのだと思います。

出願件数の1位はサンリオ、2位は資生堂、3位花王、4位小林製薬、5位明治となっています。サンリオはキャラクターで、著作権と思っていましたが、商標を重視しているようです。

 

日本からのマドプロの出願件数ですが、2017年は2505件です。

9年前の2008年に比べて倍増していますが、特許のPCTが4万7425件であるのと比べると、まだまだ少ないように思います。

 単純計算ですが、特許では、日本出願数の18.5%がPCT出願となっているようです。

一方、商標では、日本出願の1.4%がマドプロ出願となっている計算です。

10倍以上の開きがあります。マドプロの加盟国は徐々に増加しており、十分活用に値する状態になっていますので、当面の目標としては、マドプロの件数をアメリカやドイツ並みにするというようなものがあっても良いかもしれません。

海外で事業をするには、まず商標がないとスタートラインに立てませんので、十分立派な経済政策となるように思います。マドプロは、相当、テコ入れした方が良いと思います。

 

ちなみに、WIPOの統計では、2016年に、日本のマドプロ出願は2352件で8位ですが、1位のアメリカは7741件、2位のドイツは7551件、3位のフランスは4132件、4位の中国3200件、5位のスイスが3074件となっています。

http://www.wipo.int/edocs/pubdocs/en/wipo_pub_940_2017.pdf

 

その他、特許庁ステータスレポートには、世界のマクロの数字の紹介があります。

特に、面白いのは、日本居住者の海外での商標登録件数の推移で、だいたい10万件/年です。マドプロの国際登録を延べ国数で見ているのかどうか、記載しておいて欲しいと思いました。