Nishinyの商標・ブランド日記

商標・ブランドの情報です。弁理士の西野吉徳のブログです。

閃きの番人(第三話)

今回は、商標とトレードドレス(不正競争)

 2018年3月29日に、弁理士会の広報漫画の「閃きの番人」の第三話(後編)がでました。弁理士会からの連絡メールでも来ましたので、相当、弁理士会(広報センター)は、力を入れているのだと思います。

 

前編で、ケーキ屋さんの商標出願をするという話があり、後編はそのケーキ屋さんの名称や店舗デザインなどが模倣され、警告書を出して対応するという話です。

 

漫画「閃きの番人」 – 日本弁理士会

是非、漫画をご覧ください。

 

コメント

今回は、前編では、弁理士の有人が新規にケーキ屋さんをはじめたので、商標出願をする話であり、そして、後編では、侵害事件が起こり、商標権侵害とトレードドレスの話になっていきます。

 

テーマの選択は、良いと思います。また、前半は、商標出願実務の説明としては良くできていますし、後半も企業努力の重要性(今回は、周知性の獲得)について説明しているのは、良く考えられているなと思いました。ただ、少し、強引にハッピーエンドの結論にもっていっているなと思いました。

 

和歌山のコメダ珈琲の事件がベースにあるのだとは思いますが、現実の事件では、コメダ珈琲のケースもそうですが、警告書を送るだけで解決する事件などはなく、何回も議論を重ねたり、仮処分申請をしたり、本訴を提起したりして、やっと事案は動くのだと思います。

 

コメダ珈琲のケースを見てみました。本訴は和解で終了していますので、仮処分が重要です(東京地裁 平成27年(ヨ)第22042号)。

http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/545/086545_hanrei.pdf

商品・役務ではなく、店舗外観が、不競法の2条1項1号、2号の要件である、1)商品等表示に該当し、2)周知・著名であり、3)両者の表示が類似であり、4)混同のおそれがあるか、という点が論点になっています。

仮処分の決定では、使用期間の長さ、宣伝状況、周知性から、店舗外観が営業主体を識別する営業表示性を獲得しており、商品等表示になるとし、コメダ珈琲の主張が認められています。

ただし、コメダ珈琲のケースでは、飲食物と食器の組合せも、商品等表示と主張していたようですが、こちらは認められていません。

料理の盛り付けまで、保護を認めるのは、難しいのだと思います。

 

概念としてのトレードドレスは、①店舗外観に商標登録(あるいは意匠登録)を認めるかどうかの議論と、②不正競争防止法で保護されるかどうかの議論、の2本立ての話であり、時々この2つが、トレードドレスというと、ちゃんぽんになってしまいます。

 

弁理士が関心があるのは、①であり、これは、立体商標が大きくなったようなものです。昔は、店舗外観のようなものは、商標法上の商品や、NGとしていたのですが、今は、サービスマークがあるので、サービス分野なら権利化が無理ではなさそうです。ただし、店舗は、敷地やロケーションで、形状が様々ですので、代表的なものを登録することはできても、全ての形状の出願はできないので、現実には、類似概念で、どこまで保護できるのか?という議論ではないかと思います。

 

日本の商標実務では、平面商標がメインで、立体となるとカーネルサンダースやペコちゃんを想定してしまいますが、店舗を構成する個々の要素(例えば、ファサード、立て看板、特徴のある外壁などを、写真にとり、個別に立体商標の商標権を取って、その組み合わせを使って店舗を作り、権利活用(ライセンスや権利行使)はその組み合わせや類似範囲で勝負するとすれば、現状でもトレードドレスは保護可能なのではないかと思います。

従来の商標に比べるとと、面倒ですが、意匠なら、部分意匠や関連意匠で、この程度は、検討しています。トレードドレスの保護は、期間的な問題を考えると、意匠よりは、断然、商標です。

特許庁は、意匠で検討しているようですが、商標の実務家が手を抜いる間に、意匠で保護されるようなことがないか心配です(重複保護は可能ですが)。

 

②は、上手に法的に立論をすれば、本当は、従来から法律上は、保護されるていただけかもしれません。

 

どうでしょうか。

 

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