Nishinyの商標・ブランド日記

商標・ブランドの情報です。弁理士の西野吉徳のブログです。

サービス業の生産性

米国の半分

2018年4月7日の朝日新聞で、サービス業の労働生産性が、米国の半分であるという記事を見ました。日本生産性本部が国際比較をしているようです。

digital.asahi.com

  • 日本生産性本部が、産業別の労働生産性を、欧米4カ国と比較し、分析結果公表
  • サービス業では米国の半分ほど
  • 欧州の7割程度
  • 生産性は就業1時間あたりの付加価値で算出
  • 米国の生産性水準を100とした場合、日本のサービス業の平均は50・7
  • 「宿泊・飲食」が38・8、「卸売り・小売り」が31・5と低い
  • 日本の製造業の平均は67・4

 元ネタが次のところにあります。

公益財団法人日本生産性本部 - 産業別労働生産性水準(2015年)の国際比較

サービス業の生産性は、ドイツの3分の2、フランスの7割とあります。

これでも、2010年よりは、建設業や運輸・郵便、宿泊・飲食で改善しているとのことです。

 

コメント

日本生産性本部の別の資料に、労働生産性の説明がありました。

  • 労働者一人当たりが生む出す成果、あるいは労働者が1時間で生み出す成果を指標化したもの
  • Output=付加価値(あるいは生産量)を分母に、Input=労働投入量(労働者数あるいは労働者数×労働時間)を分子にして表す
  • 労働者の能力向上、効率改善に向けた努力、経営効率の改善で向上
  • 各国比較は、購買力平価(PPP)で通貨換算

結局、労働生産性は、Outputが高いと高くなります。

本当は、商品・サービスが高く売れれば、労働生産も高くまります。

生産性というと、効率をあげて働くというイメージがありますが、実は、高く売れれば、効率を上げなくても生産性はあがります。

 

しかし、同質の商品・サービスでは、高く売るということは難しいので、労働者の能力向上、効率改善に向けた努力、経営効率の改善などが必要になるという関係です。 

nishiny.hatenablog.com

効率化という意味での生産性向上ですが、特許事務所で勤務して、生産性の改善が重要であるが、これを上げるのは難しいと感じています。

 

特許事務所の場合、メインの仕事は、現時点、明細書作成業務となっています。依頼書・原稿・発明相談などをベースに明細書を作るのですが、非常に労働集約型で、効率を上げるのが難しい業務のように思います。

 

同じ分野ばかりを担当することで、技術の理解が深くなり、明細書を書くことが速くなることはあるようですが、そうそう同じ分野ばかりで無いようですし、その場合は、技術の理解から始まるので、時間がかかります。

そもそも、一件いくらの請負仕事なので、時間をかけても、時間をかけなくとも、もらえる対価は同じです。

従量制(アワリーチャージ)を採用する方法もありますが、基本は、同じ分野の仕事に特化するしか、生産性向上の道はなさそうです。

 

また、外注先もあまり多くありません。翻訳会社やDBを提供する調査会社などはあるのですが、メインの明細書作成は、フリーの職人のような方はいるようですが、外注は基本はしないようです。

明細書の作成は、ワープロソフトで、コツコツ書いているようですので、時間がかかります。時間を掛ければ掛けるほど、良くはなるのでしょうが、生産性は低下します。

 

従来は、国内の明細書で儲からない分を、外国出願の翻訳代で儲けるというのが、特許事務所の一般的な収益構造だったと思います。

この翻訳を、特許技術者が自分でできることが、大きなの効率化になりますが、これをできる人は非常に少ないようです。

 

一般的に、考えられるのは、次のようなものです。

①法制度・法運用・判断力などは、経験を積むことでしか向上しません。

②処理スピードを上げる、正確性を向上することは、IT化や事務所内の効率化です。

③英語力の向上で、コミュニケーションミスやロスが減り、処理スピードが向上します。

 

特許事務所で、商標の仕事をはじめてまだ1年であり、個人としては、まだまだ生産性向上の余地はありますが、それでは限りがあります。

組織全体として、継続的に生産性を上げるには、どうしたら良いのかと考えてしまいます。日本のオフィスワーク全体の課題かもしれませんが。