Nishinyの商標・ブランド日記

商標・ブランドの情報です。弁理士の西野吉徳のブログです。

堂島は地名だけれども

堂島プレミアムの使用差止と損害賠償

2018年4月19日の日経夕刊に、「堂島ロール」のモンシェール(元はモンシュシュ)が、「堂島プレミアム」にロゴマークの使用差止と損害賠償を求めた裁判につき、大阪地裁の判決があったという記事がありました。

www.nikkei.com

 

  • 堂島ロール」のモンシェールが、商標権侵害で、堂島プレミアム側にロゴマークの使用差止と1億円の損害賠償を求めた訴訟
  • 2018年4月19日までに、大阪地裁判決
  • 使用差止と約3400万円の損害賠償の支払いという判決
  • 2016年に仮処分で使用差止済。堂島プレミアムはロールケーキを販売していない
  • しかし、再度販売して営業上の利益を侵害する恐れがあるとの主張
  • モンシュールは、「堂島ロール」を2007年に商標登録
  • 堂島プレミアムは、2012設立。「プレミアムロール」名の商標販売。商標登録の申請は堂島ロールとの誤認混同の恐れを理由に退けられた

コメント

モンシュシュ事件は、聞いたことがあったのですが、現在、堂島ロールの会社の商標はモンシェールとなっているようです。

 

登録第5031406号で、「堂島ロール」の包装紙をモチーフにした商標の登録があります。これは、複雑な構成ですので、登録になってもおかしくありません。こちらは、使用による特別顕著性(商標法第3条第2項)が認めれたものではありません。この登録が2007年です。

次に、登録第5446720号に、「堂島ロール」の文字商標だけの登録があります。こちらは、拒絶査定不服審判も経由していますし、異議申立がされています。最終的には、商標法第3条第2項で、商標登録になっています。この登録は、2011年です。

 

日経の記事に、2007年商標登録とありますが、これは、包装紙のモチーフですので、正確には、2011年登録というところではないかと思います。

 

2005年から、関東に出てきてしまったので、関西のテレビは帰省や出張のときに見る程度で、堂島ロールがどの程度、地元で有名だったのかは分かりませんが、有名な地名の「堂島」(東京でいうと「虎ノ門」「日比谷」のようなイメージでしょうか?)に、ロールケーキの「ロール」をくっ付けただけの商標に顕著性(識別性、先天的登録性)があるとも思えず、基本的には誰でも使える言葉です。

ただし、使用による顕著性はあるので、商標登録を取得した当該ロゴ限定だけとか、ズバリ同一の「堂島ロール」だけとか、射程範囲の狭い商標権と理解しました。

しかし、今回の本訴の結論は、高額の損害賠償も認めています。

 

権利者が一旦、苦労して権利を取ると、活用しようとするのは、当然と言えば、当然です。

 

商標法第3条第2項適用で取得した権利の効力の制限という論文があるかどうかです。この論点、日本に先行文献がなくても、海外に判例や論文がありそうです。基本的には、外観の継続的な使用をベースに登録しますので、審査とのバランスからは、外観まで類似でないと権利侵害は認めにくいのではないかと思います。ただ、著名性のレベル次第では、単なる称呼類似もあると思いますが。

 

一つ、裁判所の判断に影響があるとすると、消費者が有名な「堂島ロール」だと思って、「堂島プレミアム」の「プレミアムロール」を購入し、混同が生じているという考え方です。消費者保護というのであれば差止までは、なんとか理解できます。

商標実務の立場からすると、「堂島プレミアム」と「プレミアムロール」が別々に記載してあると、「堂島プレミアム」がハウスマーク(ブランド)で、「プレミアムロール」がネーミング(ペットネーム)と理解しますが、消費者は、「堂島プレミアムのプレミアムロール」、だいぶ略して、「堂島ロール」と認識するのかもしれません。(プレミアムが2回あります。堂島ロールの上等なもの表現とも考えることが可能かもしれません。)

 

下記のブログに、筆者のお母さんが間違って買ってきたという話がありました。

2desu.net

 

ただ、素直な印象としては、高額の損害賠償はちょっとやり過ぎな感じがしました。既に使用を中止しているものに更に差止のは判決をするには、損害賠償もセットでないと説明がつきにくいというところかもしれません。

 

より複雑な背景は、こちらのプログに記載がありました。ご参考までに。

http://seppaku.blogspot.jp/2017/03/blog-post_8.html