Nishinyの商標・ブランド日記

商標・ブランドの情報です。弁理士の西野吉徳のブログです。

偽五輪エンブレム

商標権侵害で、初の逮捕

2018年5月17日の日経(夕刊)によると、警視庁生活経済課は、東京五輪パラリンピック市松模様のエンブレムが入ったメダルを、大会組織委員会の許可を得ずに販売目的で所持したとして、会社員を商標権侵害で逮捕したということです。

五輪エンブレム入りメダル所持 会社員の男逮捕 (写真=共同) :日本経済新聞

同じ記事は、2018年5月17日の朝日新聞夕刊にもありました。

  • メダルには、「平成32年」の文字
  • 中国の通販サイトで発見。2枚1セットを450円で購入
  • 本物のメダルは千円銀貨(純銀製)
  • 2016年にリオデジャネイロ大会からの引継ぎを記念して、1枚9500円で、各5万枚販売

 

コメント

はじめに、朝日新聞を見ていたので、2016年に出たリオデジャネイロ大会からの引継ぎを記念した千円銀貨の話があったので、通貨偽造(罪)なのかなと思い、それなのに商標権侵害というのは変だなと思いました。

 

結論としては、今回は、ただのメダルで、通貨ではないようです。このメダルは、銀色単色の単なるメダルです。そのデザインは、日経の電子版に出ています。

一方、2016年のリオ引継ぎ記念千円銀貨は、カラーが多用されたカラフルなもので、パッケージも高級です。AMAZONなどで、4~5万円程度で販売されています。今回のメダルは、そのデザインを借用しているようです。

 

子供のころから、通貨の偽造は犯罪ということは皆知っていると思いますが、五輪エンブレムの使用が犯罪になるということは、知らない人がいる可能があります。

 

今の時代、キャラクターマーチャダイジングが盛んですので、社会人としての知識として、大会組織委員会のようなところが、市松模様の五輪エンブレムには商標権が存在し、それを使って商売すると、商標権侵害になる可能性があると考えるとは思います。

 

しかし、少し前までは、このようなエンブレムは大会を盛り上げるためのものであり、皆で積極的に使っていこうというのが、社会の雰囲気だったように思います。

 

エンブレムの問題では、五輪の商業化が進んで、時代が変わっていることを、もっと理解してもらう必要があるように思います。今回の逮捕は、その事実の周知を図るための逮捕だったのかと思ってしまいます。

 

今回のメダルは硬貨のデザインに似ていますし、また、大会組織委員会も何らかのデザインの記念メダルを販売したりすると思うので、問題の多い商品ではあると思いますので、注意喚起するには良かったのかもしれません。

 

ちなみに、オリンピックの開催される施設の近くの街の商店街が、横断幕に大会エンブレムを使って大会を盛り上げたいと思えば、正式に申し込めば、東京2020参加プログラムというもので、五輪エンブレムのようなもの?(五輪エンブレムの一部)を使えるようです。

participation.tokyo2020.jp

 

五輪エンブレムの保護は、特別法なりを作るべきという議論があったように記憶していますが、今回の逮捕を見て、商標権侵害で、逮捕までして、よかったのかと思いました。

 

一般に、インターネットオークションの個人の利用者を何処まで商標権侵害で逮捕するかは、難しいと問題だと思います。輸入する個人には、メダルの真贋判定も困難です。(今回は商標調査は不要ですが、個人には、商標調査までは困難です。) 

個人輸入は危険だからやめておけとも言えません。

 

メルカリやヤフーといった事業者が、中国の同業者のように、権利者の同意書を持ってこないと販売しないことが必要なように思います。

 

ちなみに、海外では、日本の法律では及ばないので、その国で著作権侵害とするか、商標権を取得するしかありません。

大会組織委員会は、本気であれば、中国のメダルの(製造・販売)業者を止める必要があります。

大会組織委員会には、第二、第三の被害を防ぐためにも、日本の個人よりも、現地製造元を追求して欲しいと思いました。