Nishinyの商標・ブランド日記

商標・ブランドの情報です。弁理士の西野吉徳のブログです。

「今治」タオルの商標

中国での異議申立を、ニュースリリース

2018年5月22日、5月25日と、今治タオルのWebサイトで、中国の冒認出願に対して、今治タオル側が商標登録異議申立をしたことがリリースされています。www.imabaritowel.jp

  • 商標は「今治」で、商品は第24類「タオル、ケット類」
  • 出願人は上海の会社
  • 異議申立人は、今治市今治タオル工業組合
  • 出願日は、2017年2月23日
  • 公告日は、2018年2月27日
  • 今年の5月27日までが異議申立期間で、5月27日に異議申立をする予定であると22日にWebサイトで告知し、25日に異議申立をしたことを再度、告知
  • 異議申立理由は、「今治」は、愛媛県今治市の行政府の名前
  • また日本一のタオル生産量を誇り、地域ブランドである「今治タオル」の原産地として中国で広く知られた外国地名

コメント

中国で、日本の地名が、第三者に商標出願されること(冒認出願)されることはよくあり、「青森」(リンゴについて)など、有名な事例があります。

  

商品は不明ですが、JETROのサイトに、次の都道府県名が登録されているとありました(2016年の「中国における日本の地名等に関する商標登録出願の状況について」)。

https://www.jetro.go.jp/ext_images/_Reports/02/2016/b8bb08b0c7db33f0/rpCh201607.pdf

青森、岩手、宮城、秋田、山形、福島、群馬、千葉、埼玉、神奈川、富山、石川、 福井、長野、岐阜、愛知、三重、京都、和歌山、島根、岡山、山口、徳島、香川、 愛媛、高知、佐賀、熊本、宮崎

 

これが登録されて、輸出などに支障があったり、現地でそちらの商品が流通してしまっては、大変ですので、新聞などのニュースになるのは分かります。

 

特許庁も、国際協力課が対策を支援をしているようです。

www.jpo.go.jp

 

対策としては、県や農協や商工会などが自分達で権利取得をするのも方法ではあります。ただ、通常は、地名は商標ではないので、商標出願にはなじまないので、異議申立が一番の方法でしょうか。

 

青森のケースは、マスコミにだいぶ出ましたので、日本政府(例えば特許庁経産省)にも声が届いているので、中国当局に対しで、地名や産地名があった場合に、慎重に判断するように促すなどの効果があったと思います。

ただし、中国は、非常に年間500万件を超える商標出願があるようですので、審査な完全を求めることも難しく、異議申立をすると同時に、マスコミを動かすなどして、問題であることを社会に提起する必要があります。

 

今回の「今治」タオルの商標権の場合は、それを自分のWebサイトでやっている点が、注目されます。

青森の場合は、県や農協等が動いたのだと思いますが、マスコミを活用して、課題提起をしています。一方、今治市は、自らのサイトでそれを社会に対して表明しています。

 

今回の話は、そもそもが公的な話ではありますが、昔であれば、商標登録異議申立や無効審判は、特許庁の公報には掲載されるとしても、それまでは、当事者はできるだけ秘密裏に進めるというのが通常だったことからすると、だいぶ時代が違うのかなと思いました。

そもそも、昔は、Webサイトがありませんでしたが、負けたらどうしよう、恥ずかしいと、商標担当者は考えてように思います。隔世の感があります。

 

自分の権利は、役所などの第三者に守ってもらうのではなく、自分で守るのが、グローバルに生き抜くための常識ですので、今治タオルのWebサイトへの掲載は、小さなことですが、評価できるのではないかと思います。

 

マスコミの活用や、自社サイトは、これからの異議申立では、検討しておかなければならない方法であると感じました。