Nishinyの商標・ブランド日記

商標・ブランドの情報です。弁理士の西野吉徳のブログです。

ネットについての3つの見方

ダニー・オブライエン氏の話

2018年6月20日朝日新聞に、電子フロンティア財団のダニー・オブライエン氏とのインタビュー記事があありました。

米国・中国・EUのネットについての見方の違いを説明していて、説明が分かりやすいと思いました。

  • インターネットは、自由で開放的であるべきという考えが基本
  • 米政府は、早くからネットから情報を取ろうとした
  • 民間は、暗号化技術で対抗
  • 中国は、政府による監視を全面に出し、国民が悪さをしないように抑える戦略
  • 中国人は、プライバシーを政府に渡すことに嫌悪感がない
  • 米国は、インターネットは自由な言論空間であり、政府の干渉を嫌う
  • 欧州は、企業が個人情報をどれだけ持っているかを気にする
  • ルールに従わないと、域内で商売させない

コメント

米、中、欧と、プライバシーに対する考え方や文化が、ネット規制に影響を及ぼしているという面白い分析だと思いました。

 

EUの一般データ保護規則(GDPR)が5月から施行され、企業や団体が域外に個人情報を持ち出すことを禁止し、違反すると高額の罰金が科せられます。個人情報には、名前、住所、メールアドレス、商品の購入履歴などが入るようです。

これは、FacebookAppleAmazonMicrosoftなどの米国企業が強くなり過ぎ、価値のある個人情報を米国が独り占めしているという課題を、個人情報保護という別の方法で圧力をかけているものという面があります。

 

ダニー・オブライエン氏は、欧州の制度には、良い制度という評判があり、他国でモデルとなる可能性はあるとします。一方、中国の管理タイプの制度が世界に広がる可能性はないとしています。

 

中国のネットの見方と近いものに、監視カメラの問題があります。中国の監視カメラの設置台数は、日本の比ではありません。先日、テレビの報道番組で、中国の監視カメラ社会の報道で一般市民へのインタビューがあったのですが、監視カメラ社会を全く嫌がっていないのには驚きました。

この記事にある、ネットでのプライバシーを政府に渡すことに嫌悪感を抱かないというのと、同じだと思います。

 

日本は、情報を米国企業に吸い上げられているという意味では、欧州と同じなのですが、欧州のような規制をして、対抗しようという話は聞きません。どうしてなんでしょうか。

 

関連で面白い記事が、2018年6月23の日経夕刊にありました。半ユートピアにみる「現代」というタイトルで、最近、ジョージ・オーウェルの「1984」が米国でベストセラーになっているそうです。

1984」では、テレスクリーンに、人間が管理されますが、スマホは現代版のテレクリーンであり、レストランや道順を検索しているうちはいいが、熟慮すべき行動の選択までスマホの指令に依存する危険性があるとしています。

欧州のデータ規制は、データ管理者がおそるべき権力を手にし、その改ざんの威力は計り知れないとのことです。

www.nikkei.com

 

プライバシーは、権利としては新しいもので、基本は憲法上の権利で、政府と国民の関係での権利です。

実害があれば民法不法行為で議論になりますが、最近はネット社会になった影響で個人情報保護法ができています。

日本の個人情報保護は、法律が社会の文化を作ってしまったような、やりすぎな面があり、学校の学級名簿が作れないとかのマイナスの側面もありますが、定着はしてきているようです。

 

個人情報保護で、年賀状を送ろうにも住所もわからなくなり、結局、知人との連絡はFacebookに頼らざるをえなくなりました。

個人情報保護法のため、LINEなどの一部の企業に情報が集中しているという面があります。

その企業が悪用しない限りは、問題ないのでしょうが、Facebook問題が、1984の将来を暗示しており、批判が出ています。

企業の規制しか、対処方法がないのでしょうが、この先、米国の法律がどうなるかが、重要だと思います。