京都のエーゲルがアサヒ飲料を提訴
2018年7月19日のSankeiBizに、京都のエーゲルという会社が、「Tea Coffee」という商標権の侵害で、アサヒ飲料を提訴したという記事がありました。
- 「ティーコーヒー」は、お茶とコーヒーを混ぜた商品
- 京都のエーゲルが、2016年6月、煎茶とコーヒーを融合させた飲み物を「ティーコーヒー」として商品化し、販売
- 京都のエーゲルがアサヒ飲料に、3300万円の損害賠償を求める訴訟を大阪地裁に提起
- エーゲルは、2017年7月に、「TeaCoffee」の商標をイラスト付きで商標登録
- アサヒ飲料は、2018年4月、カフェラテとほうじ茶を合わせた商品「ワンダ TEA COFFEE」を発売
- アサヒ飲料は「商標権侵害には該当しない」とコメント
コメント
コンビニで、「ワンダTEA COFFEE」が並んでいたのを買い、何回か飲んだことがあります。飲んだのは、無糖の、お茶とコーヒーを混ぜたような飲料です。すっきりしたコーヒーという感じでした。
J-Plat Patで検索すると、京都のエーゲルは、「(図形付きの)TeaCofee」(登録第5963932号、出願日:2016年12月9日、登録日:2017年7月14日)の商標権者です。
そして、「TEA×COFFEE」「TeaCofee」を出願中です。
これらの書体は通常のものです。
エーゲルは、この商標を、下記のWebサイトで、実際に使用中のようです。
京茶珈琲|NAGI Kyoto – きちんと珈琲、そしてお茶。新しいTeaCoffeeの世界へ。
これに対して、アサヒ飲料は、「(図形付きの)TEA COFFEE」(出願日:2017年12月6日)を出願しています。
アサヒ飲料の商標出願時点では、エーゲルの図形付きのTeaCoffeeは、既に登録になっています。
調査ミスなら、アサヒ飲料が裁判で争うことはないでしょうから、アサヒ飲料には、TeaCoffeeには識別力がないという判断があり、その判断に相当な自信をもっていることではないかと推測します。
J-Plat Patではよく分からないのですが、先行する商標で「Tea Coffee」や「ティーコーヒー」の出願が、識別力がないとして拒絶されいる事例があったり、コーヒーなどの世界では、「Tea Coffee」や「ティーコーヒー」の言葉は普通名称や記述的名称であって、エーゲルの権利は、図形部分にのみあるという判断ではないかと思います。
エーゲルが、出願中の「TeaCofee」の審査がありますので、ここで特許庁の判断はでます。しかし、拒絶になるせよ、登録になるにせよ、拒絶査定不服審判や、異議申立もあるので、確定するまで、だいぶ時間がかかるので、エーゲルとして、今、裁判するのも理解はできます。
ただ、エーゲルが、本気なら、差止請求が基本になるはずですが、損害賠償だけなのは気になります。金銭解決を除む意思があるということでしょうか。
海外では、Disclaim(権利不要求)の制度があり、識別力のない部分は、権利範囲でないと権利に明示されるので、日本も、そろそろ、その制度が必要な時代になったのではないかと思います。
識別力は時代とともに変化するので、商標法第26条の解釈で、係争時に判断し、解決しようというのが、今の制度設計ではないかと思いますが、
商標が、訓練を受けた弁理士を中心として、閉じた世界のものとするなら、権利解釈の指針となる権利不要求の制度がなくても良いですが、
情報公開が進み、誰でも無料でJ-Plat Patを通じて、商標検索できるような現在においては、権利の解釈指針を権利に埋め込んでおくことは重要なことではないかと思います。
もし、権利不要求の制度があったとして、「TeaCoffee」という言葉全体の部分に権利不要求する方法と、「Tea」「Coffee」という部分を個別に権利不要求する場合があります。
後者の方法では、「TeaCoffee」という組合せには、識別力があることになります。
審査では、特許庁の審査官は、全体を権利不要求するように求め、出願人(エーゲル側)が、「Tea」「Coffee」は個別は権利不要求OKだが、「TeaCoffee」全体では識別性があると争うというイメージです。
識別性の問題は、商標調査でも難しいところですので、まともに検討を始めると、大変です。
単純にGoogleで、TeaCoffeeと検索しても、相当な件数がでてきますし、Global brand databaseでは、●●tea coffeeはありますが、tea coffeeズバリはありません。
ただ、資本力のないエーゲルでは、記述的名称とするしかないものが、資本力のあるアサヒ飲料の場合は、積極的な宣伝投資で商標登録がとれるというのは、しかたないのですが、バランスに欠ける気もします。
その意味で、大会社には、大企業の社格に見あった自省が求められると言うところでしょうか。ここは、特許事務所や法律事務所では判断できない問題です。