Nishinyの商標・ブランド日記

商標・ブランドの情報です。弁理士の西野吉徳のブログです。

初の司法取引(外国公務員への贈賄)

両罰規定を避けて、社員に責任

2018年7月21日の日経に、外国公務員への贈賄事件にからみ、司法取引があったという話が出ています。

r.nikkei.com

  • タイの発電所建設事を巡り、現地公務員に賄賂を渡した
  • 三菱日立パワーシステムの元取締役と元執行役員、元部長の3名を不正競争防止法違反(外国公務員への贈賄)で在宅起訴
  • 司法取引を適用して、法人は不起訴
  • 意思決定をする立場にあった幹部を起訴。現地社員らについては起訴を見送り
  • 建設資材を荷揚げする際、違反を見逃してもらう見返り。約3900万円
  • 2015年3月に内部告発で発覚。6月に東京地検に報告
  • 2018年6月に地検から司法取引の提案。合意
  • 日本は、OECDから摘発強化を、再三勧告されている
  • 検察は、司法取引を企業犯罪に活用する方針

 という内容です。

 

コメント

最近、外国公務員への贈賄という話題に興味を持っていました。

大昔、日本でも特許を取るために審査官を贈賄したということを聞いたことがあるのですが、例の大蔵省の事件以降、そんなことはないと思います。

しかし、海外、特に、新興国でははありえないことはないなと思っていました。贈賄で商標権を取得すると、不正競争防止法の外国公務員への贈賄防止になります。

 

イバンカ・トランプの商標権取得などでは、商標出願しただけで、議論になっている論点でもあります。 

nishiny.hatenablog.com

 

司法取引は、2018年6月から施行されている制度です。

刑事事件では、だんだん事件解決につながる自白があつまらなくなり、そのため、通信傍受などの新たな物証とともに、当事者の自白を得るための手段として導入されたもののようです。  

もともと、殺人、麻薬事件などを想定していたようですが、3月の閣議決定で、広く経済犯罪に拡大し、独禁法違反、不正競争防止法違反など他、特許法や商標法、著作権法なども広く対象になっています。 

e-Gov法令検索

 

今、マスコミで話題になっているのは、司法取引により、とかげのしっぽ切りとか、会社が個人を売る時代になったということです。この件については、日経ビジネスに解説記事がありました。

business.nikkeibp.co.jp

 

従来の日本型の雇用慣行では、企業は社員を守るもので、それに対して、社員は多少の法律違反は厭わないというものでしたが、今回の刑事訴訟法の改正で、企業が社員を守らなくなると、日本の企業文化・風土が劇的に変わるという議論です。

 

海外では、そもそも企業のために犯罪をすることはありえないということであり、犯罪は、全て自分のためのものということです。

 

日本型雇用慣行は、安部政権の働き方改革で大きく変わってきており、副業の禁止、終身雇用、年功序列、一括採用などが崩壊していていますがそれと共に、企業は社員を売る時代になったとしてます。

個人は、余程しっかりしないといけない時代になって来ているように思います。

 

ここ20年ほど、両罰規定が強化され、コンプライアンスが叫ばれて来たのに、企業犯罪が一向に減らない原因に、企業が個人を守っていた点があると思います。これが変わると一挙に変わる可能性があります。

 

反対に、2018年7月15日の日経には、部下が企業に内部通報したような場合には、企業の調査の段階から、弁護士をつけるなどが必要になるという指摘がありました。

 

こういうことにならないためにも、会社のために犯罪を犯すことがないようにしないといけない時代になったことを心しておく必要があります。