Nishinyの商標・ブランド日記

商標・ブランドの情報です。弁理士の西野吉徳のブログです。

技術ブランディング(3)

氾濫するマーク~多様化する認証~

昨日、ご紹介した田中正躬さんの監修(監修、編著)の本です。日本規格協会刊で、2012年発行ですので、こちらの本の方が、5年ほど昔の本になります。小さなサイズの本です。 

氾濫するマーク―多様化する認証

氾濫するマーク―多様化する認証

 

 製品には、様々なマークが付けられています。この本では、それを、4つに分類しています。

1)適合マーク、第三者適合マーク

2)供給者のロゴマーク、トレードマーク、ブランドマーク

3)ピクトグラム

4)ラベル

このうち、1)のマーク、特定の基準に適合していることの証明を伝えるマークものでり、法律で強制されているものと任意制のものがある、この適合マークを、本書では扱っています。

 

昔はウールマークが適合性マークの代表例でしたが、現在では、このような品質保証のマークは多くなく、安全、環境、公正取引、労働にかかわる人権など倫理的な社会的価値を重視した適合マークが多いようです。(特に海外)

 

適合マークの代表例の説明があるのが、本書の特徴ですが、JISマーク、S-JETマーク、SGマーク、SEKマーク、SIAAマーク、BAAマーク、エコマーク、STマーク、海外関係のマーク(ドルフィンセーフマーク)まで、個別に、紹介がされています。

 

このマークには、公的なものと、私的なものがあり、昔は、国の機関のマークが多かったのが、その後、企業のマークが増え、現在は、NGOによって運営されているマークが増えているとあります。NGOのマークが増えているのは、国際的な合意形成に時間がかかりすぎることが、理由のようです。そして、ソフト規制のマークが増えているようです。

 

厳格な基準のマークから、自主判断の自己規制のマークまであり、マークが氾濫しているとあります。マークの信頼性を確保するための、ISOの適合性評価のルールに合致しないものが、環境エコラベル関係には多いようです。(ISOのルールが後になった)

 

ある基準があったとして、その適合性評価は、認証機関が行いますが、その認証機関を認定する認定機関というものが、上にあるようです。そのほか、試験・検査・監査をする機関もあるようです。

 

この適合性マークですが、自己適合宣言マークと、認証マークがあります。前者は、自社製エコラベルのようなものです。後者は、ISO/IEC Guide 65や67というルールがあるようです。

サンプリング、試験・検査・評価、レビュー、認証の決定、証明(ライセンスの付与)、サーベイランスと、一連の認証の過程があります。

 

コメント

本書の題名が、「氾濫するマーク~多様化する認証~」です。

「氾濫」という言葉から、現状が混沌としており、適合マークの本来あるべき考え方や、現状に至っている背景を整理して、将来への改善につなげるという意図を感じました。

ただ、日本規格協会日本品質保証機構経産省といった公的な立場の方が書かれているので、あるマークを特別に批判することはされていません。

 

ただし、エコマークについては、「エコマークの正体」という項目名の付け方から、優しい目で見ていないと思いました。

専門家ではないのですが、エコマークは、お金を払えば付けられるマークというように酷評されているのを聞いたことがあります。

 

さて、トイレで、抗菌を示す、SIAAマークを見た方は多いと思います。これは、十分、技術ブランドだと思います。

また、マーク自体は見たことがないのですが、光触媒のPIAJマークも同じようなものものだと思います。

ただし、業界団体で認定しているマークで、他社も使用可能であり、差別化にはあまりつながりませんが、一定の性能があることは明示できています。

 

抗菌のSIAAマークは、LIXILINAX)のトイレに良くついています。一方、ライバルのTOTOは、ハイドロテクトという光触媒の洗浄技術をアピールしています。

ライバルのTOTOが、別のことをしているので、適合マークを付けていることで、差別化ができているという珍しい状態になっています。

 

そして認証機関のやり方は、他者にライセンスするときの参考になります。