Nishinyの商標・ブランド日記

商標・ブランドの情報です。弁理士の西野吉徳のブログです。

技術ブランディング(7)

テフロン/Teflonの権利取得状況

技術ブランディングの成功例として、テフロンがあります。以前は、正方形のタグに、カタカナで「テフロンⓇ」とあり、下の方に、小さく説明書きがあって、「テフロンⓇはデュポンの登録商標で、フッ素加工の名称です。」というような説明があったように思いまが、最近は、英語で「Teflon」というタグに変わっているようです。DUPONTがTMで、Teflonが®️なのは変ですが、技術ブランドは普通名称化しやすいので解らなくもありません。

 

権利取得状況を見ると、大きく、1954年の当初、1980年代、1992年の日本にサービスマーク登録制度ができた時期に分かれるようです。

TEFLONで検索すると10件の商標権がありました。出願時期を追ってみると、

 

◆一番古い時期の出願は、素材です。

  • 第1類「成型品製造用合成樹脂粉末,押出製品用合成樹脂材料,その他の原料プラスチックセルロイドを除く。)」(34A01)です。<1954年3月16日出願>(登録第466348号)。

少し遅れて、<1954年9月2日>に、次の出願があります。

  • 第2類「樹脂製上塗り塗料,エナメル塗料,その他の塗料(色はく・切り粉・地の粉・砥の粉を除く。)」(03C01)(登録第466340号)と、
  • 第17類「電気絶縁材料」(11D01 )(登録第465605号)と、
  • 第17類「合成繊維糸(織物用のものを除く。)」(15A01)、第23類「織物用合成繊維糸,麻糸,混紡糸,紙糸」(15A01 )(登録第472932号)

◆次のタイミングは、用途のタイミングです。

  • 第21類:なべ類,コーヒー沸かし(電気式又は貴金属製のものを除く。),鉄瓶,やかん,食器類(貴金属製のものを除く。),携帯用アイスボックス,米びつ,魔法瓶,アイスペール,泡立て器,こし器,こしょう入れ・砂糖入れ及び塩振り出し容器(貴金属製のものを除く。),ナプキンホルダー及びナプキンリング(貴金属製のものを除く。),盆(貴金属製のものを除く。),しゃもじ,手動式のコーヒー豆ひき器及びこしょうひき,じょうご,なべ敷き,はし,ひしゃく,ふるい,麺棒,ワッフル焼き型(電気式のものを除く。),アイロン台,こて台,へら台,愛玩動物用食器(19A01 19A03 19A04 19A05 19B03 19B33)(登録第1768544号)
  • 第4類:ドライ潤滑剤,ウエツト潤滑剤(01A01)(登録第2004802号)
  • 第24類:ガラス繊維織物,合成繊維織物,ガラス糸をテトラフロロエチレン樹脂及びその他の合成樹脂で被覆した糸で製された織物,耐汚染性及び耐水性の加工が施された織物,その他の織物,メリヤス生地,フェルト,不織布(16A01 16A03 16B01 16C01)(登録第2407643号)
  • 第8類:手動利器,手動工具(13A01 13A03 13B01 13B02 13B03)、第21類:魚ぐし(19A05)(登録第2559800号)
  • 第24類:織物,メリヤス生地,フェルト,不織布,ゴム引防水布,ビニルクロス,ラバークロス,レザークロス,ろ過布(16A01 16A03 16B01 16C01 16C02)、第26類:テープ(16A02)(登録第2660293号)

◆最後が、サービスマーク登録制度の導入後です。

  • 第40類:皮革製品・プラスチック製品等のふっ素樹脂による表面加工の質の証明(40C02 )(登録第4117159号)

ちなみに、カタカナの「テフロン」ですが、こちらは、5件あります。当時の日本市場では、英語ロゴよりも、日本語ロゴが重要だったのだと思います。

 

素材→応用製品→証明(サービス)と変化してきているのが分かります。

 

日本にサービスマーク登録制度が入ったのが、1992年と遅いですので、サービスは遅れても仕方ないので、時期的には、「素材」の時期と、「応用製品(サービスのこのあたりでしょう)」の時期に分かれると思います。

 

素材ができたときは、まず、素材の権利を取るのが、先決です。だんだん、用途開発がされて、応用製品にシフトしてくるのは、自然の流れです。

 

実際、テフロン加工というと、「フライパン」と「傘」にタグが付いているのを見ることが多いと思います。

フライパンは「なべ類」の所で見るとして、傘は権利がありませんでした。たぶん、「織物」のところで、生地を見ているのだと思います。

 

素材と、その中間製品の織物と、サービスマークでフッ素加工をしていることを証明しているという点で、何らかの権利を持っているという状態のようです。

 

権利取得状況の流れは分かりました。この相当古い権利群で、「テフロン」は維持されているようです。

 

特許が、既に切れた頃に、商売が大きくなっており、それを商標戦略で守っている感じです。この全体が、技術ブランド戦略なのだと思います。