技術ブランディングの事例で、よく出てくるのが、ユニクロのHEATTECH(ヒートテック)です。冬に暖かいという点が、売りです。
東レの繊維研究所によると、東レではこの繊維のことをカチオン可染ポリエステル 「LOCⅡ」というようです。
この東レの「LOCⅡ」という名称は、 技術者がつけたような、純粋な技術的な名称ですね。これで、消費者に覚えてもらおうというのは、難しいと思います。
消費者に覚えてもらうには、ユニクロのヒートテック(HEATTECH)のような、「覚えやすく、云い易く、機能がわかる」ネーミングが必要です。
このネーミング、難点をいうと、「T」が二回繰り返す点でしょうか。一回で良いのか、二回か、アルファベットで書く時に、迷ってしまいました(検索して確しないと、自信がありませんでした)。
元々は、東レがユニクロに提案したようですが、ユニクロの方が、ネーミングのセンスが上だったということでしょうか。
「しまむら」でも、同じような下着があるようですが、「ファイバーヒート」といい、ユニクロと兄弟会社のGUは、「GU WARM」と云っているようです。
先行者のユニクロのヒートテックだけは有名ですが、それ以外は有名ではありません。
ヒートテックは、暖かい下着の代名詞となっています。(ここは、技術ブランディングでは、普通名称化を防ぐ必要があると言われる所以です。ユニクロのHEATTECHの場合は、名称自体は、技術的な名称ですが、ピンクや黄色を多用した、HEATTECHのロゴに、普通名称化を防ぐ効果があるのかもしれません。)
東レとすれば、ユニクロ以外の会社を含めて、繊維が売れればそれでよいのでしょうから、LOCⅡなどでも、何の問題もないのかもしれません。
ユニクロは、自身のWebサイトなどの広告宣伝で、東レとの共同開発ということをうたっています。
ただし、ユニクロには、消費者の要望をメーカーに伝えることはできると思いますが、繊維を作る力はありません。
共同開発という言葉は、お客さんの要望を伝える程度では、通常は使わない言葉であり、ユニクロが東レに対して実際に繊維を作る段階で実際に知恵を出したか、あるいは、東レに対して研究開発費を出したかが必要ではないかと思います。
このあたり、きっちり書いたものは、見つかりませんでした。たぶん、要望を出した程度なんだろうなと想像しました。そして、そこを、共同開発と言っているのだと思います。
この点、東レという信頼のおけるメーカー名が出ているので、消費者にとっては、特に、不利益な情報ではないので、何の問題にもなっていないのですが、気になるところです。
東レとしては、LOCⅡではなく、自らが「ヒートテック/HEATTECH」という名称をなぜ、考えなかったのか?という点はあります。
ユニクロが売ってくれなくても、この繊維が売れたかというと難しいかなと思うのですが、東レ自ら、テフロンや、GORE-TEXになれる可能もあったのに、残念なところです。
詳細は、分からないのですが、この繊維の本来の機能は、保温だけではなかったのかしれません。そういう意味では、機能性に着目した、用途開発(の要望)を、ユニクロが行ったのかもしれません。もし、そうなら、共同開発と言っても良いのかもしれませんが。。。(可能性ばかりの話で申し訳ありません)
ちなみに、夏用の「AIRism(エアリズム)」も、ポリエステルであり、東レとの共同開発商品だそうです。
「AIRism(エアリズム)」、技術のネーミングというようりは、商品のネーミングという感じがするネーミングです。
何回か言っていると思いますが、類い稀な良いネーミングだと思います。もともと、サラファインとシルキードライであったものを、グローバルに通用する「AIRism(エアリズム)」にしたということです。
ネーミングの教科書に載るべき良い名前です。