「エッセンシャル戦略的ブランド・マネジメント第4版」
辞書的に使える、ケラーの戦略的ブランド・マネジメントには、成分ブランディングの説明がありました。ケラーの本は、ブランディングの教科書として一般的なものです。
コ・ブランディング(ダブルブランド)が先に説明されており、その特殊な形態として、成分ブランディングがあるという説明です。
●コ・ブランディングは、複数の既存ブランドが、何らかの形で一つの製品に結合され、一緒にマーケティングされることをいうとします。
2つのすでに良く知られたイメージを結び付け、製品導入のコストを減らし、差別化されてないカテゴリーを差別化する手段とあります。
例としては、ベンツがスウォッチがスマートカーを作ったこと、マクドナルドがディズニーとハッピーセットで提携していたことが挙げられています。
- 長所は、必要とされる専門技術の借用、有していないエクイティの活用などとあり、
- 短所は、消費者の心の中で、別のブランドと一組とされることにより生じるリスクとコントロールの喪失、ブランドの個性が強いとそれぞれのブランドが何を表現しているのかについて消費者に迷いが生じるなど、とされています。
●ケラーは、このコ・ブランディングの特殊なケースが、成分ブランディングとしています。
成分ブランディングとは、ブランド化された他の材料、構成要素、部品のブランド・エクイティを対象とするものとします。(ここに特殊性があるだけで、基本的には、コ・ブランディングと考えているようです)
例としては、ドルビーのノイズリダクション技術、ゴアテックスの耐水性繊維、テフロンのこびりつかないコーティングなど、一般的な成分ブランドの事例です。
消費者からは、ブランド化された成分は品質を示すサインであり、リスクを減らし、安心させるものであり、成分ブランドは業界標準となり、消費者はそれを含んでいない製品を買いたがらないとします。
検討事例として、シンガポール航空のファーストクラス「スカイスイート」に、ジバンシィの寝具、イタリアの名匠(ボルトローナ・フラウ)の職人手作りした新しいチェア、有名店の機内食、ボーズのヘッドフォン(エコノミーはドルビーのヘッドフォン)というものが挙げられています。
そして、成分ブランドの長所と短所は、コ・ブランディングと同じとします。
ブランド化された成分のエクイティがあまりにも大きくなると、何が本当のブランドなのか消費者が混乱するとの記述があります。
製品が当該成分を含むことを消費者に明確に知らせるため、目安となるシンボルやロゴが必要で、これが品質と信用を消費者に伝えるとします。
コメント
コ・ブランディング(ダブルブランド)と、成分ブランディングは、近いとは思っていたのですが、明確に同じと言い切っている点が、ケラーのポイントでしょうか。
コ・ブランディングの場合は、どの相手と組むかについて、非常に自由度があり、マクドナルドは、ディズニーではなく他のキャラクターと組むこともできますし、マクドナルドとディズニーが組んでいると、バーガーキングとディズニーと組むことはないと思います。
一方、成分ブランディングの場合は、業界標準となっていると、他のものと組みにくく、インテルではないCPUの採用は難しくなるなど、皆が同じものを成分とします。ドルビーのノイズリダクションなど、互換性表示のものが代表です。
また、コ・ブランディングの対象ブランドは、もともとは、独自の別のブランドで、自らの事業がありますので、勝手に広告宣伝もします。
この点、成分ブランディングの場合は、テフロン、ゴアテックスが、業者向け(プロ向け)の宣伝はあるでしょうが、消費者向けの宣伝はしないことが普通です。(インテルは別です。
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ブランド価値のコントロールとしては、成分ブランドの方が、パッケージ化されており、品質など明確に示すため、コ・ブランディングよりは、扱いやすいという感じはします。
ただし、シンガポール航空の事例まで行くと、成分ブランディングというよりも、多くのコ・ブランド先と提携した、コ・ブランディングではないかという気がします。