Nishinyの商標・ブランド日記

商標・ブランドの情報です。弁理士の西野吉徳のブログです。

フラダンスの振り付けに著作権

大阪地裁判決

2018年9月21日の日経夕刊に、フラダンスの振り付けに著作権を認めた大阪地裁の記事が載っていました。

www.nikkei.com

  • ハワイ在住のフラダンスの指導者が提訴
  • 自ら創作した振り付けを許可なく使われ著作権を侵害されているとして、講師や会員による上演差し止などを求めた
  • 判決は著作権侵害を認め、会員への指導と国内施設での上演禁止、約43万円の支払いを命じた
  • 手の動きやステップに個性が表現されている
  • 訴訟では、原告が実演や振り付けの解説を実施
  • 映画の「Shall we ダンス?」では、東京地裁は、社交ダンスは既存のステップの組合せで、独創性を認めるほど顕著な特徴はないとして、著作権を否定

とあります。

 

コメント

Shall we ダンス?の社交ダンスで著作権が認められ、一方、フラダンスでは認められたというのは、どういうことなのかなぁというのが、第一印象です。

 

著作権法を見てみると、著作権法10条1項3号な著作物の定義があり、「舞踊」があります。この舞踊は、実演ではなく、「振り付け」のことをいうようです。

 

また、実演家の権利というのがありました。実演家とは、ダンスも含めた、俳優、舞踏家、演奏家、歌手その他実演を行う者及び実演を指揮し、又は演出する者をいうとあります(著作権法2条1項4号)。

実演家には、著作隣接権として、録音権や録画権(91条)、放送権(92条)などの著作隣接権があり、一回限りの実演そのものではなく、それを固定したり、放送したりすることの話です。

Shall we ダンス?は、この放送権にも関係はしているようが、今回の論点は、そこではなく、振り付けに、著作物性がそもそも認められるという点です。

 

さて、考えたのは、EXILEのRising Sunや、ピンクレディのUFOなどの人気の楽曲の振り付けを行うことが、著作権侵害になるのか?という点です。

この場合、実演を見たり、放送、録画されたものを見て、覚えて実演する場合です。

これらの振り付けは、相当に創作性が高く、これらの振り付けは著作物性がありそうですので、振付師が著作権を主張しようと思うとできそうな感じはします。

 

ただ、社会的にRising SunやUFOの振付師が商業的な振り付けでは、そのようなことを言うようにも思いわれません。流行っていくらであり、著作権を主張するメリットがないのかもしれません。

 

また、権利者が著作権を主張して、判決で差止を認めると言っても、流行っているときに、世の中を止められないような気がします。

 

フラダンスの場合、最終の会員ダンサーの前に、協会や講師といったフィルターがあり、そこが無いと振り付けができませんし、今回は、権利者とそこの部分が争っているようですから、判決をもって、止めることは可能です。

 

今回、判決の執行可能性が、差なのかなぁと思いました。

 

Shall we ダンス?の放送の禁止を求めた振付師の件は、映画の製作者が、一番初めの契約時に映画だけではなく、その放送まで含めて契約しておくことをしなかったので、裁判になったのかと想像しました。

 

一般的には、映画がヒットすれば、次は放送となります。それをしていなかったのは、この程度の振り付けでは、著作権を主張されないだろうという甘い判断があったのかもしれません。

 

ただ、放送ができなくなると、それはそれで困る人が出てきます。裁判所はそこを見たのかなあと思います。