適正使用管理はどこにあるのか?
先日紹介した、日本経済新聞の「商標の管理(TRADEMARK MANAGEMENT)」は、米国のUSTA(合衆国商標協会)のメンバーが執筆したものです。
彼らは商標の弁護士で、法律事務所の人もおられますが、企業の関係の弁護士が多いように思います。
どのような会社かというと、
(「Ⅲ 商標の適正な使用」の項目)
- フィルコの法律顧問
- ジョンソン・アンド・ジョンソンの法律顧問
(「Ⅳ 商標の内部的管理」の項目)
- デュポンの法律顧問
(「Ⅴ 商標の警保(警戒保全)」の項目)
- コカ・コーラの法律顧問
(「Ⅵ 商号」の項目)
- クェーカーオーツ会社弁護士
法律顧問と会社弁護士がどの程度違うのかは良く分かりませんが、単なる法律事務所の弁護士ではなく、企業に近いことは確かです。
ブランドガイドラインは、今の時代なら、「社内情報」として、社内では自由に流通させるけれども、外部には出さことが、多いと思います。
デザイン会社や広告代理人など、必要な人に渡すことはOKだが、必要な箇所だけPDFの該当ページを渡すようするというような、管理がされていることもあると思います。
機密・秘密ではないが、取扱いに注意して渡しましょうという考えです。
ところが、この「商標の管理(TRADEMARK MAMAGEMENT)」を見ていると、読者にどうぞ見てくださいと、各社のブランドロゴのガイドラインを提供しています。
当時は今ほど、機密にうるさくなかったのか、非常にオープンです。
米国は、戦後日本に特許なり、ノウハウなりを開示してくれて、日本はそれを学んでキャッチアップしますが、商標の世界でも相当学ぶことがあったように思います。
USTAが発展したものがINTAです。先日、やっとWebサイトの会員限定ページに入れました。事務所がメンバーなら、簡単に入れるようです。
検索エンジンがあるので、「proper use」と入れると説明のパワーポイントがありました。また、「trademark makagement」と入れると、Trademark Portofolio Management Strategiesなどの項目はあります。しかし、ポートフォリオの話になります。
昔の本は、事例が多く(知っている会社名も出てきますし、知らない会社名も多々出てきますが)、今でいう、アーカー先生や、ケラー先生のような経営学的なブランディングのケーススタディあるいは、ライズ父娘の実践的なブランディングのケーススタディに近い内容です。
それを各社の法律顧問や社内弁護士が紹介していることになります。
以前は、適正使用管理を中心に、法律家が商標法と一緒にやっていた内容が、細分化して、経営学としての「ブランディング」に移行していったような感じがします。
本家のアメリカがこうですので、日本がそうなっても致し方ないというところでしょうか。
ただ、まだ、アメリカには、使用宣誓や、更新時の使用証拠の提出があり、そこでは義務的に全件、使用のチェックが入ります。
大阪の元弁理士の大量出願など、使用(や使用意思の確認)を重視しない日本法の限界が露呈している話ですが、使用意思の宣誓、使用している宣誓、使用証拠は、そして、使用方法の管理は、もう一度、基本に戻って商標業界の人は検討し直した方が良いと思います。
最近、商標部門の評価が低いとか、商標業務のプレゼンスを上げるためには、どうすれば良いのかという話を何回も聞きます。昔も同じ話がありましたが、どうも、最近は更に状況が悪化しているという感覚のようです。
適正使用管理の業務を軽視している現在の状況が、関係しているように思います。少なくとも、商標の適正使用管理は、商標弁理士や企業の商標担当者の必須の知識ですので、商標担当たるものは、一度は、現場でブランドマネジメントを経験すべき業務なのだと思います。
ブランドマネジメントは、やってみると相当に法律的な素養が生きる分野です。